【electrox 2016】新年最初の大規模フェス!日本におけるEDMの行方や如何に?


日本において、EDMカルチャーは後発である。今更言うまでもないことだが、この事実こそが、この国では重要な意味を持つ。

electroxの第一回目が開催されるよりも前に、既に海外ではEDMに対して否定的な見方が存在していた。「ボタン・プッシャー」だの「iPadプレイヤー」だの、ネガティブな評価も目立っていた。このジャンルは、そのような見方も含めて輸入された音楽なのである。デッドマウスのエキセントリックな発言も、日本人はシーンが本格化する前から知っていたのだ。スノッブな音楽オタクによる批判も、日本のファンは軽やかに受け流して見せる。「ボタン・プッシャー?知ってっけど?」ぐらいに思っているのだ。何だかパンクの精神を感じさせる。このリアクションはまさに、後発組だからこそ成せる業だろう。

electrox

このフェスの良いところは年齢制限(国内クラブ・ミュージック・フェスの大半は二十歳以上でないと会場に入れない)を設けていない点にあって、未成年もこのステージを観られる。ファンの多くを抱えているのが若年層だから、これが大変重要なのである。自身が未成年であるがゆえに入場すら出来ないという、彼らのフラストレーションは凄まじい。それはULTRAの中継動画配信のコメント欄を見ても確認出来よう。少しでもノリの悪い客を見るや否や、嵐のような罵声を浴びせるのだ。あの場には、もはや怨念に近い感情が渦巻いている。これもまたパンクだ。

何が彼らをそこまで駆り立てるのか。これについても散々言われていることだが、作家のクリエイティビティが発揮されるのは、サウンドだけにとどまらない。散々言われている割に、これがなかなか理解されない。かつてデッドマウスが言ったように、EDMアーティストの技術は必ずしもオーディエンス側から視認出来るものではない。その多くはライブの準備の段階で輝くのだ。そうして出来上がった音楽に、映像やライティングが複合的に絡み合い、トータルアート的なパフォーマンスが展開される。

electrox

今回のelectroxにおいて、そのようなクリエイティビティを圧倒的な濃度で表現して見せたのは、満場一致でKSHMR(カシミア)だろう。かねてより日本のサブカルチャーをモチーフにした曲を作っていたが、まさかここまで造詣が深いとは。初来日ということで気合も十分だったのか、細部に至るまでギークなこだわりが見えた。

先に述べたトータル・アート的展開に、完璧なストーリー性を付与するアーティストが稀に存在する。筆者はポーター・ロビンソンがその最先鋒だと思っていたが、KSHMRが華麗にそこへ名乗りを上げた。彼もまた恐るべきストーリーテラーであったのだ。ただし、満遍なくジャパン・カルチャーを横断するポーターと違い、KSHMRの場合はより局地的である。この日彼が見せたのは、日本的RPGの世界観に根差した物語だった。オリジナルに“Omnislash”という曲があるが、これはまさしく『ファイナルファンタジーⅦ』からの引用である。VJが出す映像の中でも、クラウドやセフィロスがしっかり駆け回っていた。ジェノバまでいらっしゃったほどだ。その上、日本語のナレーション(恐らくこれも相当こだわった)まで施されているのだから恐れ入った。

セットリストにも意味がある。最後を飾ったのは“Burn”ではなく、自身のルーツである“Kashmir”だった。「初めまして」の挨拶代わりとしては十分すぎる内容である。ネット上でも彼をベストアクトに推す声が散見されるが、よもやそれに異議を唱える者はいないだろう。素晴らしいステージだった。

electrox

しかしながら、感動してばかりもいられない。疑問に思う点もいくつかあった。昨年あたりから懸念されていたこと(アレコレ)が、緩やかに顕在化してきた。EDMが持つ大衆性ばかりが前に出ていて、肝心な音楽が蔑ろにされている感が拭えない。これは他のジャンルにも言えることかもしれないが、EDMカルチャーでは一層顕著である。もはや単なる「流行り物」として解釈する時代は終わっていて、個々のサウンドに焦点を当てる段階に来ているはずだ。今回はKaskade(カスケイド)が攻めたセットリストを組んでいたが、あのレンジの広さを咀嚼できるだけの素養を、日本人の多くはまだ持ち合わせていなかった。もちろん、オーディエンスは決して安くないお金を払って会場に来ているわけだから、好きな音楽を好きなように楽しめば良い。だが、これからのことを考えると一抹の不安が頭をよぎる。Kygo(カイゴ)やOliver Heldens(オリヴァー・ヘルデンス)も、いつかは日本に来てくれるかもしれない。そのときに、観客が彼らの前を素通りする様を想像すると、耐え難いほどの寂寥感に襲われる。

年々規模が大きくなっているEDMムーヴメントだが、ここらで一度気を引き締めたいところだ。僕らのパンクな精神が、どうか消えてしまいませんように。

Rudeboi

Work It

Trouble


electrox 2016

<関連リンク>
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text:川崎 ゆうき

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