【Mercury Rev】最重要サイケデリック・ポップ・バンド、見参!!

  • twitter
  • facebook
  • line

来る12月1日(火)、渋谷リキッド・ルームにてマーキュリー・レヴのワンマンライブが開催される。以前よりリキッドには足繁く通っているが、今年は特に訪れる機会が多かったように思う。メインストリームとアンダーグラウンドを自在に行き来するようなラインナップで、ここはいつも僕たちを楽しませてくれる。つい先日も、コートニー・バーネットが熱いステージを見せた。

さて、今回はマーキュリー・レヴである。彼らの来日公演はSUMMER SONIC 2009以来であるから、6年ぶりだ。単独公演に限れば1999年以来なので、実に16年ぶりである。新作“The Light In You”の出来もすこぶる良く、今から心待ちにしているファンも多かろう。そもそも新作を発表するのが7年ぶりだから、日本に限らず、世界中から歓喜の声が上がっている只中である。この記事では、そんな彼らの歴史を遡りつつ、「集大成」と言って差し支えない新作にフォーカスを当てたい。

マーキュリー・レヴ入門のための2枚

筆者の独断と偏見で選ぶため、既に脳髄までサイケな色に染まっているファンには共感されない部分もあるかもしれない。あらかじめご了承下さい。最初に断っておくと、初代ヴォーカルのデヴィッド・ベイカー(のちに脱退)を中心に作られたファースト、並びにセカンド・アルバムは、今回は割愛させていただく。現在のマーキュリー・レヴの音楽性が確立されるのは3枚目以降だ。

Deserter’s Songs

マーキュリー・レヴの通算4枚目にして出世作である。ドリーミーな構成でありながら、ノイジーなサウンドも随所で顔を見せる。アルバム全編通し、彼らの色が前面に出た一枚だ。’98年にはNMEの年間最優秀アルバムにも選ばれており、名実共に彼らの代表作と言って良い。気を抜くと涙してしまいそうなメロディラインと、壮大なオーケストレーション。大げさなほど奥行きのあるサウンドスケープを作り出しておきながら、一切の破綻がない。緻密なプロダクションの上で成り立つ理想郷。これがマーキュリー・レヴである。本作は2011年に再販されているので、今から彼らを聴きこむ方にはそちらを強くお薦めしたい。

All Is Dream

Deserter’s Songsと並び、マーキュリー・レヴの代表作と評される名盤だ。通算5枚目となる今作でも、彼らのアプローチは変わらない。それどころか、前作で確立したサウンドを更に深化させている。1曲目の“The Dark Is Rising”から、あっという間に彼らの世界へ引き込まれる。内省的なサウンドを鳴らす多くのサイケデリック・バンドとは違い、彼らの音楽は明らかに「開かれた風景」だ。先に述べたような奥行きのあるプロダクションに加えて、今度は圧倒的なストーリー性も付与されている。順番通りに聴いて行くと、“Nite And Fog”ではっとするはずだ。このアルバムを聴き終わった時、漏れなく一本の映画を観たような充実感が訪れるだろう。

The Light In You

通算8作目となる最新アルバム、“The Light In You”に焦点を当てたい。アルバム全体の雰囲気は“Deserter’s Songs”に近く、その上ポップな質感も孕んでいる。更には初期のヴィンテージなサウンドも顔を覗かせ、さながら彼らのディスコグラフィーを自伝にしたような内容だ。ジャケットのアートワークも見事で、幻想的な物語の予兆を感じさせる。実際、オープニングが上の“The Queen Of Swans”なのだから、この目論見はまんまと成功したわけだ。相変わらず凄まじいストーリーテラーである。

深遠な音響世界も健在で、聴いているとやはり違う空間へ飛ばされる。緩急自在なサウンド・プロダクションと共に、印象深いコーラスワーク。特に5曲目の“Emotional Free Fall”に顕著だ。賛美歌のように神々しい幕開けから徐々にギアを上げ、鮮やかに色彩を加えてゆく。同じく「色彩」というテーマならば、7曲目の“Autumn’s in the Air”もその美しさを炸裂させている。流麗なストリングスと共に、時折り登場する物憂げなブラス。タイトルにある通り、まさしく秋の色彩感覚である。ぜひ冬が到来する前に聴いていただきたい。今作の中で筆者が最も好きな一曲だ。

このアルバムを発表するまで、7年という長い年月を要したわけだが、彼らはただその期間を通過したわけではかった。自分たちの足元に注目し、更に視線を前に向ける。カムバック作としては出来過ぎな一枚だ。これがライブではどのような変化を遂げるのか、刮目したいところである。


Mercury Rev 単独公演
日程:12月1日(火)
会場:東京 LIQUIDROOM

日程:12月2日(水)
会場:大阪 SOMA

<関連リンク>
Mercury Rev 単独公演 チケット詳細ページ

<関連商品>

マーキュリー・レヴ
ザ・ライト・イン・ユー
Amazon.co.jp で詳細を見る