サマソニ裏方論 広報・PR編 「お客さんの楽しむ姿がなによりのPR」

  • twitter
  • facebook
  • line

フェスはアーティストだけでなく、たくさんの裏方スタッフの働きがあって形作られていきます。そんな裏方さんのお仕事にスポットを当てるこの企画、今回は宣伝部部長を務める平山善成さんに、サマソニの広報・PRとはどんなお仕事なのかを伺いました!

ーーまずは平山さんの簡単な経歴を教えてください。

平山 クリエイティブマンで仕事を始めて16年ほどになります。サマーソニックで言うと、第2回、幕張に会場を移した年からです。そこからずっと宣伝部でプロモーションの仕事をしています。ジャンルはロックが好きで、前職はHMVで洋楽のバイヤーをやらせてもらっていました。

いつ、どのような形で出演者を発表するかがポイント

サマーソニック

ーー入社当時と今とでは仕事内容に違いはありますか?

平山 当時の宣伝部の仕事は、今よりも宣伝用チラシの重要度が高かったですね。自分たちで切り貼りしてチラシを作成したり、レコードショップやライブハウスにチラシを置いてもらえるように足を運ぶのも仕事のひとつでした。まだウェブでのチケット予約はあまりなくて、チラシに掲載してある電話番号で先行予約を受けていた時代。ときには土日にスタッフ総出で出社して、予約の電話をとり続けるなんてこともありました。今はサマソニを中心に、年間通じてフェスの広報業務を数多くやらせていただいています。主な仕事としては、その出演者の発表についてのプレスリリースの組み立てがひとつ。チケット発売日から逆算して、いつどう発表するのが一番効果的なのかを考えるんです。フェス全体のプランニングに関わる重要な仕事です。

ーー「第1弾出演者発表!」「第2弾出演者発表!」というやつですね。発表のタイミング次第で、今年行くフェスを決める人も多いかと思います。

平山 海外、国内含めて他のフェスのリリース情報をチェックしながら、自分たちが発表するベストのタイミング、プランニングを決めていきます。なので、最新の情報を収集することはこの仕事でもっとも重要な要素です。その過程でレーベルさんとやり取りをすることも多いのですが、どのタイミングで誰の新譜リリースがあるのか、そのアーティストの出演は可能かなどの情報のやり取りを常にしています。つまり、結果的にブッキングにも携わる仕事なんです。スケジュール的なことで、海外アーティストの出演は早めに発表されます。国内アーティストはそのあとになることが多いので、まだこれから大物の出演発表ができるかもしれません。戦略的にあえて発表を控えて取って置くこともありますから。(と話してくれた数日後に、和田アキ子の出演が発表されました!)今年で言うと、ビーチステージ、ガーデンステージ、土曜深夜のホステス・クラブ・オールナイターのアーティストについては、これから7月くらいまでかけて、まだまだ皆さんに「おおっ」と言ってもらえる出演者が発表できると思いますよ。

▲出演者のランナップはまだまだ増える。今後の発表が楽しみだ
▲出演者のランナップはまだまだ増える。今後の発表が楽しみだ

アーティストに深く携われるのは大きなやりがい

ーーまだ、大物が…。楽しみです。新譜リリースのタイミングに合わせてフェス出演が決まったりするんですね。つまりは出演が決まっているアーティストは今年新譜のリリースがあるかも…と思ってもいいのでしょうか?

平山 出演者のラインナップを見て、そんな深読みをしてみるのも楽しい見方かも知れませんね。出演交渉をするなかで、僕らは自然とアーティストの新譜やプロモーションに関わることもあります。たとえば、昨年来日したサム・スミス。初めは数年前に、BBCで注目の新人として紹介されていたのを見て気になってて、レーベルさんに問い合わせたのがきっかけでした。で、まずは日本でもお披露目の場を作ろうということで、アーティストの特性に合わせて、雰囲気があって印象に残る箱でやろうと考え、鴬谷の東京キネマ倶楽部を選びました。『初来日公演は東京キネマ倶楽部でやった』という実績は、プロフィール欄にずっと残りますし。そういったアーティストのイメージ作りの部分から関わって、昨年は代々木体育館で単独公演を行うなど、いまや世界的にも大ブレイクしてますよね。どうやって売り出していくかという段階からアーティストに深く携われるのは、この仕事の大きなやりがいです。

▲サム・スミスの初来日公演のステージは、あえて特徴的な箱をチョイス
▲サム・スミスの初来日公演のステージは、あえて特徴的な箱をチョイス

サマーソニックならではのPR方法とは?

ーー他に近年だからこそ取り組んでいる、サマソニならではのPR方法はありますか?

平山 クリエイティブマンのオウンドメディアである『And More!』の運営もひとつですし、雑誌、新聞などの紙媒体、ラジオ、TV、SNSなどメディアをマルチに使った展開は意識しています。公式のインスタグラムには専属のカメラマンを置いてクオリティを高めていますし、サマソニ当日にもSNSを使った仕掛けを作っています。たとえば、ステージの転換時間は手持ち無沙汰になりがちですが、ハッシュタグを付けてtweetすることで自分のメッセージや写真がステージのスクリーンに流れるようにしました。お客さん自身にSNSを使って情報を発信してもらう仕掛けは、僕らが力を入れている部分です。いろいろなPR方法がありますが、やっぱりお客さんの楽しんでいる姿が一番のPRになるんですよ。

ーーなるほど。たしかにそれが一番伝わりやすいかも知れませんね。では、最後に平山さんが今年イチ推しの出演者を教えてもらえますか?

平山 ホステス・クラブ・オールナイターの出演者は組み立てにかなり関わりましたので、僕自身の好みが少し反映されているかもしれません。あとは皆さん同様、レディオヘッドは楽しみにしています。前回出演した2003年は、スタジアムの外にいるときに大歓声が聴こえてきて「あ、この盛り上がりはもしかして『Creep』やったかな…」と思った記憶があります。残念ながら見られなかったんです…。レディオヘッド以外にですか? 正直、どの出演者も出演を依頼するに至ったストーリーがそれぞれあって、それぞれに思い入れがあるので、イチ推しをひとりだなんて選べないですよ!

Text & Photo:池田圭(verb)


サマーソニック2016
2016年8月20日(土)・21日(日)
東京会場:QVCマリンフィールド&幕張メッセ
大阪会場:舞洲サマーソニック大阪特設会場
<関連リンク>
SUMMER SONIC 2016