シューゲイザー？パンク？グランジ？ ・・・いや、リンゴ・デススターだ！

ついにジーザス＆メリー・チェインの来日公演が来週に迫った今、シューゲイザーファンの高揚もアチコチで確認出来る。しかもそれが至高のデビュー・アルバム“Psychocandy”の再現ライブとあれば、ファンならずとも垂涎ものだろう。27日（金）の追加公演のチケットはまだ発売中のようなので、迷っている方はぜひ！

で、今回ピックアップしたいのは、彼らのライブが終了してから約2週間後に来日するバンドである。マイ・ブラッディ・ヴァレンタインが“Loveless”によって打ち立てたシューゲイザーの金字塔を、愚直なまでにリスペクトし続ける3人組がいる。それがリンゴ・デススターだ。元々はパンクの文脈の中に身を置いていた彼らだが、ソフィア・コッポラ監督の映画『ロスト・イン・トランスレーション』を観て、道が開けたのだそうだ。同作のエンディングで、先述のジザメリによる“Just Like Honey”が使われているのだが、確かに名シーンだと思う。

そんな彼らのフルデビューアルバム、“Colour Trip”の中から一曲。それはもう、ド直球のシューゲイザーだ。

気持ちがいいぐらいノイジー。エリオット・フレーザー（Gt.& Vo.）とダニエル・コーボーン（Dr.）が織り成すソリッドなバンドサウンドと、紅一点であるアレックス・ゲーリング（Ba. & Vo.）の甘美な歌声のミスマッチ感。歪みの中に類稀な美的センスを感じられる。そこはかとなく漂うグランジっぽさもグッドだ。

東日本大震災におけるリンゴ・デススター

2011年、彼らは大いに日本人を勇気付けた。多くの海外アーティスト（当初彼らの対バン相手であったプリミティヴズすらも）が来日公演をキャンセルする中、この3人はジャパンツアーを決行。しかも当時はまだまだ混乱の只中にあった4月である。彼らの周囲の人間も「行くな」と止めたのだが、米国メディアの報道と日本の現状に差異を感じ、来日に踏み切ったのだそうだ。会場は新代田FEVERだったが、まさに大盛況であった。彼らの熱い思いに突き動かされたファンも多かったのだろう。会場は終始エモーショナルな空間だった。この時は、特に“So High”が格好良かったのを覚えている。

ニューアルバム、“Pure Mood”

そんな彼らの最新作が、絶賛発売中である。“Pure Mood”と銘打たれた本作は、シューゲイザーへ傾倒するだけでなく、ちょっぴりアンビエントな要素も入っている。重厚なサウンドにも更に磨きがかかり、ケオティックな世界観はより奥行きが増しているようだ。その筆頭となるのが、やはり“Guilt”だろうか。セカンド・アルバムの“Mauve”（特に“Brightest Star”）の流れをしっかり汲みつつ、グランジ感も顕著に。これはレコーディングにスマッシング・パンプキンズのジェフ・シュローダーが参加していることも、大きく関係していよう。先日公開されたMVで確認してほしい。

（アレックスの美貌も更に進化しているように思うのだが、如何だろう）

なお、“Pure Mood”初回生産分は「懐かしのおまけシール」付き（無くなり次第終了）なので、こちらもぜひ気にかけていただきたい。「ラーメンラリー」等のデザインでお馴染みのNEGI BROS.氏によるイラストで、大変ツボを押さえた特典だ。各メンバーのシール1種ずつ、メンバー全員が揃ったキラシール1種、全4種のうちどれか1枚がランダムで封入されている。ちなみに筆者が購入したCDにはアレックスが入っていた。満足である。

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先日のロッテルダム公演の際、航空会社の不手際で自分たちの荷物が紛失したそうだが、その後はどうしたのだろう。「ダニエルは裸でプレイするしかないな」などとジョークを飛ばしていたが、特に警察のお世話になったという話は聞かない。まぁ、無事だったのだろう。ともあれ、そんなハプニングも楽しんでいる様子である。屈託の無さも彼らの魅力の一つだ。今回の来日でも、きっと素敵な笑顔を見せてくれるだろう。