進化し続けるフェス「ULTRA MUSIC FESTIVAL 2017」開催レポート

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3月24日から3日間に渡りアメリカ・マイアミで開催された「ULTA MUIC FESIVAL(UMF)」 今年も世界中から多くのダンスミュージック・ファンが集まり、その数のべ16万5千人。その人気と熱気は相変わらず、会場内はアーティスト、音楽、そして「UMF」への大きな愛に絶えず包まれていた。

UMF

マイアミで開催された今年で19回目となる「ULTA MUIC FESIVAL」(以下UMF)だが、その歴史に満足することなく本祭は絶えず進化し続けている。その最たる例が2年前勃興したアンダーグラウンドに特化し、ダンスミュージックの深淵を改めて提示するステージ“RESISTANCE”。そして、昨年は驚愕のビジュアルでオーディエンスを圧倒するセット“SPIDER”が新たに設置されている。音楽面のみならず、視覚的、空間的、その他あらゆる部分が毎年刷新され、それはユーザビリティなどの細かな配慮を含めれば枚挙にいとまがない。しかし、そう いったたゆまぬ努力や思いが、世界中にフェスが乱立するなかでも「UMF」が確固たる存在感を示し、大きなプロップスを獲得している由縁だろう。

ライブステージ
LIVE STAGE

そんな「UMF」の進化の過程において、今年特に注目したのが“LIVE STAGE”だ。ダンスミュージックにおけるDJの存在は必要不可欠だが、一方でライヴが秘める無限の可能性、そのポテンシャルは多くのDJも認めるところであり、日々研鑽が重ねられているのも事実。ラインナップは本流のダンスミュージック系アーティストだけでなく、エイサップ・ファーグにサイプレス・ヒル、さらにはアイス・キューブといったアーバン・ヒップホップ系の最新〜レジェンドまで揃えたことは大きな驚きだった。
初日はカシミアやズー、ラビット・イン・ザ・ムーンといった今をときめくアーティストたちが奮闘し、2日目には上記のアーバン勢に加え、チェイス&ステイタスにザ・プロディジーとバラエティに富んだラインナップ。
そして、最終日はアンダーワールドやジャスティスといった本流ダンスミュージック界のスターで有終の美。各ジャンルのファンが楽しめるよう緻密に構成されたタイムテーブルもさすがだが、後方からでもステージが望めるすり鉢状のフロアも興味深いものがあった。しかも、フロア前方には椅子が設置され、当然ライヴ時には使われないのだが、転換やその他ライヴが行われていないときにはリラックススペースとしても使えるその汎用性は見事。
音楽エンターテインメントの世界で言えば、今は興行がものを言う時代であり、その中でも希少性の高いライヴの絶対性は日々高まっている。それはダンスミュージックシーンにおいても然り。それだけにこの“LIVE STAGE”は「UMF」を新たなタームに導く起爆剤となりえる可能性は大きい。

メインステージ
ULTRA MAINSTAGE

そんな“LIVE STAGE”に加え、今回の「UMF」では計8つのステージが設置されていたが、やはり最大の盛り上がりを見せていたのは“ULTRA MAINSTAGE”。初日からアレッソにマーティン・ギャリックス、そしてトリにはメジャー・レイザーと超強力布陣が実現。とりわけ現行世界No,1 DJと名高いマーティンのプレイ時のオーディエンスの数はとんでもないことになっていたが、熱量という意味では破壊力抜群のメジャー・ レイザーの右に出るものはなし。そのエネルギッシュなプレイはもはや彼らだけにしかできない芸当、“ULTRA MAINSTAGE”の広い空間さえも 独自の色に染め上げる圧倒的なパワーで初日のラストという大役を完遂した。

メインステージ

2日目も早々からダッシュ・ベルリンにスティーヴ・アオキ、日が暮れるとティエストにアフロジャック、そしてラストはアクスウェル&イングロッソと贅沢なことこの上なかったが、そんな多くのタレントの中でも光っていたのは陽光が燦々と輝く午後のど真ん中にステージに立ったサム・フェルト。持ち前のトロピカリーなサウンドはマイアミの日差しと潮風と完全にマッチし、それだけではなく新旧様々なアンセムを矢継ぎ早に繰り出すエンターテインメント性。フェスならではの昼間の魅力もたっぷりと感じさせてくれた。

DJスネイク
DJ Snake & Future

そして、最終日には今をときめくギャランティスにハードウェル、ゼッド、ディヴィッド・ゲッタ、大トリのDJスネイクと豪華リレー。こんな顔ぶれがワンステージで完結してしまう、それもまた「UMF」ならではの魅力だが、“ULTRA MAINSTAGE”における醍醐味、それは各アーティストたちの進化だ。本祭の開催は3月、あらゆるビッグフェスの先陣を切って行われる、いわばDJたちにとってはその年のセットを占う試金石とも言える舞台。それぞれのアーティストがシーンの流れを読み、新たなセットを披露する大事な舞台のわけだが、その中で今年印象的だったのは個性。音楽的には昨年のヒットチャートの象徴ザ・チェインスモーカーズの流れを汲むメロウかつディープな方向性とフェスなどの大舞台でその威力を十分に発揮するトラップ系。そのふたつの勢いは大きく、さらには親和性の高い両者を組み合わせたハイブリッドなスタイルも目立ったが、そんなトレンドを傍目に自らの道をゆくアーティストもまた人気を博していた。各アーティストの個性、それぞれの主張がしのぎを削ることで「UMF」はさらなる高みへと至る、そう思わせるものだった。

Arcadia Spider
RESISTANCE Arcadia Spider

そして、それは“RESISTANCE”においても同じことが言える。今年は“ARCADIA SPIDER”と“carlcox MEGASTRUCTURE”のふたつのステージが用意され、メインに負けず劣らず世界的アーティストたちが集結。特に昨年に引き続き巨大な蜘蛛のセットが鎮座した前者では初日に唯一のレジデントであるニック・ファンシウリがその神髄を見せつけたかと思えば、ラストのマセオ・プレックスがその世界観をさらに拡張。しかし、白眉は最終日の大トリ、ジェイミー・ジョーンズとセス・トロクスラーによるB2B。ハウスのあらゆる魅力が敷き詰められたセットには誰もが夢中で体を揺らし、己の世界に埋没していた。

Carl Cox MegaStructure
carlcox MEGASTRUCTURE

一方、“ULTRA MAINSTAGE”の次に大きなフロアとなる“carlcox MEGASTRUCTURE”。その主宰カール・コックスのプレイ時はフロアからオーディエンスが溢れるほどの盛り上がりを見せていたが、その他にもマルコ・カローラ、マルチネス・ブラザーズ、テール・オブ・アスらが登場。なかでも圧巻だったのは巨匠サシャ&ジョン・ディグウィード。その熟練のプレイはさすがだった。ちなみに、最終日のみここは“A STATE OF TRANCE”ステージへと変貌したのだが、海外におけるトランス人気を再確認。終始満員御礼状態だったが、トリのアーミン・ヴァン・ブーレンに至っては初日の“ULTRA MAINSTAGE”以来2度目の出演だったにも関わらず、それを越えるほどの盛り上がり。ここ日本とはまた違った、ハウス、テクノ、トランスにおける本当の姿を3日間を通して改めて感じたと同時に、どのステージでも“ULTRA MAINSTAGE”と同じくそれぞれの出演者の個性が際立っていることにシーンの未来を感じることができた。

ニッキー・ロメロ
ULTRA WORLWIDE

また、今回はニッキー・ロメロやレイドバック・ルークが出演した2日目の“ULTRA WORLWIDE”に、日本からTJOとKSUKEが登場。彼らはこの大舞台においても物怖じしない堂々としたプレイで、集まったオーディエンスを魅了していた。プレイ後にふたりと話をすることができたのだが、その際TJOは本祭について「この先1年間のシーンの動向が見える、そしてそれを生で体験することができる」とその魅力を語り、一方KSUKEは今年の「UMF」について「フェスティバル要素がさらに増して、すごく新しくなった印象」と話してくれた。実際に活躍するDJたちも「UMF」に対しては同じような感覚を覚え、なおかつここでの経験が彼らの大きな糧となるようだ。

UMF

目の前には海、振り返れば高層ビルが立ち並ぶ、その絶妙なコントラストのなか開催される「UMF」。今年は会期中あいにくの雨、それも結構な大雨に見舞われることもあったが、そんな天候にも負けずに笑顔で踊り続けるオーディエンスたちの姿は何より印象的だった。なにより、全ての参加者たちが終始愛に溢れていた。
この後「UMF」は世界各地で展開され、9月には「ULTRA JAPAN」の開催も決定している。年々拡大の一途を辿る「UMF」だが、来年はいよいよ20回目。記念すべき年に進化するフェスはどんな姿を見せてくれるのか、今から楽しみで仕方ない。

text:杉山忠之


ULTRA JAPAN 2017
2017年9月16日(土)・17日(日)・18日(月・祝)
会場:東京 お台場ULTRA JAPAN特設会場

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