【主催者インタビュー】頂 -ITADAKI- 主催・南部雄亮「楽しむコツは“廃油とキャンドルを持ってくること”」

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“最高の音楽を、最高のシチュエーションで”というコンセプトのもと静岡県で開催される野外フェス「頂 -ITADAKI- 」は今年で開催10周年。
過ごしやすい環境で家族連れの参加者も多く、運営に必要な全ての電力を廃油から精製したバイオディーゼルでまかなうクリーンなフェスとしても知られています。

そこで今回は「頂 -ITADAKI- 」を主催するBOOM BOOM-BASH GROOVE PORTER 営業企画 制作の南部雄亮さんにお話を伺いました。

自分たちの目の届く範囲でやっていく

ーーーまず、南部さんはどのようなきっかけで頂に参加するようになったのでしょうか?

南部雄亮

南部 僕は東京でマネジメントの仕事をしていたんですが、地元の静岡でたまにイベントをやってたんです。そこで「頂 -ITADAKI- 」の主催チームと知り合って、声をかけてもらったのがきっかけです。
最初はこなせるだろうと思って外注の気持ちで行ったんですよ。でも、行ってみたら「頂 -ITADAKI- 」のスタッフの熱量とかに心打たれて。「なんかこのフェス面白いぞ、ちょっと違うぞ」と思って、来年もやらせてほしいとお願いしました。

ーーーそれが続いて今に至るわけですね。

南部 今ではブッキングにも携わるようになりました。ブッキングと言っても、アーティストだけじゃなくて、スタッフだったり、「頂 -ITADAKI- 」を司る全てのブッキングが大事なんです。それで当日の雰囲気とか、事後の雰囲気とか、はたまた未来の雰囲気がつくられていくと思ってるから。ブッキングって人と人とのコミュニケーションなんですよね。

ーーー大きなイベントですから関わる人数も多いですもんね。

南部 でも、基本的に「頂 -ITADAKI- 」のスタッフは少数精鋭でやっているんです。自分たちの目の届く、コミュニケーションがとれる範囲が今の規模で今のスタッフの人数なのかなって思っています。
多分、自分たちの身の丈に合わない形だったらできないな、というのは代表やスタッフとも常に意識統一してて。昨今フェスはひとつのマーケットとして重要ですけど、僕らはそんなに実力があるわけじゃないですから、そこを見失って規模を拡大していっちゃうと自分たちには役不足かなって思っているんです。

頂

ーーーもっと人がいればと思うことはありますか?

南部 もう1人、2人いてくれればと思う時もありますが、意外と伝えることが難しくて。看板やホームページ、フライヤーひとつとっても、役割分担して最後チェックするだけにもできますが、そうすると伝言ゲームみたいにだんだん伝えたいことが薄れていっちゃうんですよね。

ーーーそれがちゃんと伝わっているからこそキャンドルタイムやムーンステージのような素敵な空間が出来上がっているんですね。

南部 あそこは本当にメイド・イン・静岡なステージなんです。地元静岡の仲間で作っていて、すごく時間を費やしてるところでもありますね。代表と2人で心掛けてるのは、ブッキングもそうですけど、人と会う回数をどれだけ増やすかっていうことなんです。当日「はじめまして」というより、事前に1回会っておくかおかないかで全然変わるんで。

Moon Stage

廃油を持ってきてもらうことでストーリーを共有する

ーーー会場である吉田公園は普段キャンプ場ってわけじゃないですよね。

南部 そうなんです。だから、普通のキャンプ場で使うようなペグだと入らないんですよ。僕らも固い鉄のペグとかを持ってきてもらうようホームページで必要以上にアナウンスはさせていただいてるつもりですが…。
注意事項のところで、僕らはこっちから一方的に「禁止」とか、そういう言い方ではなくて「遠慮してください」と言ってます。僕らが一方的に発信するんじゃなくてお客さんと一緒に作っていきたいと思っているので。

キャンプ

ーーーそうやっているとやっぱりお客さんも協力的になってくれそうですよね。

南部 だから「頂 -ITADAKI- 」は事故とか、お客さんが泥酔しちゃったとか、変なトラブルが少ないですね。

ーーー廃油とかも、お客さんの協力が不可欠ですもんね。

南部 はい。4000リットルで「頂 -ITADAKI- 」に携わる燃料がまかなえるんですよ。当日以外に僕達が出張とかで使う車もバイオディーゼルでも動くようになってて、それも踏まえて全部まかなえる、というのが4000リットルなんです。事前に2000リットル集めて当日に2000リットル集めようというのが目標で、当日が一番大事ですね。
でも8000人のお客さんが1人1本500ミリのペットボトルを持ってくれれば、実はそれで4000リットル集まっちゃうんですよ。そうなると事前に集める分は本当はいらないんです。

廃油

ーーーそう聞くと実現できそうな数字ですね。

南部 でも4000リットルは達成できてなくて。
参加するときに、自分も何かひとつ参加するとストーリーを共有できると思うんです。自分の持ってきた廃油で、この好きなアーティストの音が出てるんだ…とか。

ーーーそれってすごい素敵ですよね。

南部 バイオディーゼルは環境負荷がゼロなんですね。自分たちが遊ぶことで、そこから空気を汚すってどうなんだ、だったらゴミになるものを回収してそれをエネルギーに変える。厚かましいこと言うわけじゃないんですけど、せっかく参加するんだったら自分たちで遊ぶエネルギーは自分たちで持ってこようみたいな。実はバイオディーゼルにすることで、発電機の細かいケアが必要だったりするのでお金はすごくかかってるんですよ。でも、子どもがこれだけ多い場所でかっこ悪い遊び方見せれないなというか、「こういう大人いいな」って思ってほしいですよね。

頂

ーーー子供が多いことでそういう意識が生まれているんですね。

南部 今年は過去最高持ってきてほしいなと思ってます。「キャンドルと廃油」はスタッフの合言葉になってます。関係者の招待状にも持ち物に書いてあります。“お客さんに限らず、関係者もみんな持ってきなさい。関係者、特に持ってきなさい、持ってこなきゃ、入れないですよ”ぐらいの勢いで(笑)。
本当に参加してくれた人が1本ペットボトル持ってきてくれたら、すごく面白い空気になるんじゃないかなと思うんです。他人事じゃなくて自分のイベントになるっていうか、多分その空気を、時間を大事にするんじゃないかなって。

ーーー自分のイベントだよと。

南部 と思ってくれと。それを誇りを持てるように、もちろん運営のわれわれが日々一生懸命頑張るけども、一緒に誇りを持てるように作っていこう、というのは発信してます。

ーーー持ってきてもらえる廃油の量というのは年々増えてるんですか?

南部 実は去年がすごく少なくて。それはお客さんのせいではなくて、われわれの発信力です。そこは、どこかあぐらかいてたのがあるなと思って。やっぱり廃油もキャンドルタイムもキャンプのことにしても、僕らは長年やってるから当たり前でも、お客さんにとっては、10回目の人もいれば、1回目、2回目の人もいるので、僕らのものさしで測らないで、全てのアナウンスに対して常にフレッシュに伝えていかないとな、とは思います。

頂

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