【サマソニ東京ライブリポート】BECK


ラスボスのごとく君臨していたBeck。一昨年のフジロックが最高到達点かと思いきや、そんなことはなく今回も勝るとも劣らないパフォーマンスを見せていた。すべてのジャンル、すべての世代の音楽ファンに刺さると言っても過言ではない圧倒的懐の深さ。チャンス・ザ・ラッパーのライブがあまりにも素晴らしかったので、一時は「Beckが喰われるのでは…」なんて思ったが、全くの杞憂であった。チャンスがヘッドライナーという世界線はもちろんあり得ただろうけれど、“音楽性の説得力”という点で、個人的にはBeckがトリで良かったと思う。

 『Loser』はもはや彼にとって特別な曲ではなくなった(あくまでライブにおいてはだが)。筆者は一昨年のフジロック、昨年の単独公演(@武道館)と彼の直近の来日公演はすべて参加している。そのいずれでも、この曲は特別な位置になかった。ド頭の『Devils Haircut』のほうが、最近のセットリストでは高確率で1曲目であるという点で、むしろこちらのほうが今のBeckを体現しているような気がする。

そして何より、今の彼は昨年リリースされた『Colors』に絶対の自信を持っている。珠玉のダンスチューンをこれでもかとばかり詰め込んだ本作は、どの曲もライブにおける火力が桁違いであった。表題曲の『Colors』から『Wow』の流れは、あの場にいたすべての人間を踊らせることができたのではなかろうか。

もちろん『Colors』以外からのヒットソングもてんこ盛りであったが、やはりダンサブルな曲が中心である。今まで幾度となく『Black Tambourine』は聴いてきたけれど、これほどグルーヴがあって、艶のある曲とは思わなかった。しかもここからColors随一のダンスチューン『I’m So Free』に繋げてくるのだから恐れ入る。泣く子も踊るってヤツだ。

その後数曲挟んだあとに披露したのは、DAOKOと共演した『UP ALL NIGHT』。ギターのカッティング、ベースライン、DAOKOのナーバスなウィスパーヴォイス。そしてその中心に居るベック。完璧なエンターテイメント。アンコールの『Where It’s At』の前にはNew Orderの『Blue Monday』やCHICの『Good Times』にも触り、もはやマリンステージは巨大なディスコと化していた。徹頭徹尾、彼はオーディエンスを踊らせにかかっていたのである。

 しかしグラミー賞を受賞した『Morning Phase』(ダウンテンポでアコースティックな曲が中心)からは1曲もやらない。その事実を振り返っても、現在の彼のモードは明らかであったように思う。そしてその目論見は、ヘッドライナーという役割を果たすうえでも完璧にハマっていた。

text:AndMore!編集部

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