世界標準のラインナップを揃えたホステス・クラブ・オールナイター担当者インタビュー

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サマーソニック東京会場の深夜帯に行われるイベントとして3年前に始まったホステス・クラブ・オールナイター(以下HCAN)。お客さんに寝る間を与えないような濃密なラインナップに毎年注目が集まっています。

そこでラインナップや今年のチケットに関してHCANの担当である、ホステス・エンターテイメント ライブ・プロモーション担当 近藤彩乃さんにお話を伺いました。

今後も続けていくためのチケット制

ーーー近藤さんは普段どんなお仕事をされているんですか?

近藤 普段はライブ制作と公演のプロモーションがメインです。あとはリリースのお仕事もあって、ラジオやファッション誌を担当してます。HCANの業務はポスターのデザインとか初歩的なところから始まって、アーティストとのやりとり、マーチ制作、会場内に関する装飾などの判断やプロモーションなど、HCANに関わることは全部やってます。

ーーー最初に謎の画像だけあがったりと告知の仕方がいつも面白いですよね。

近藤 ホステス・クラブ・ウィークエンダー(ホステス主催のライブイベント)が始まったときから一緒にやってるスティーヴン・チータムさんというデザイナーがいて、彼と相談しながら少しでも多く注目を集められるようにどうしたらいいか考えています。早く発表してくれよという声もいただくんですけど(笑)。今回はアートワーク全体のテーマが映画『未知との遭遇』になってるので、それをイメージしながら作りました。

ホステス・クラブ・オールナイター

ーーー昨年までとの大きな違いとして、今年はサマーソニック参加者もチケットが必要になりましたよね。

近藤 イベント自体を運営するにいはどうしてもお金が必要で。うちは新作のリリースタイミングや世界のフェスの標準にも合わせて世界中が呼びたいアーティストを呼んでるので、そのラインナップのクオリティーを落とさないためにも皆さんの協力が必要になってくるということでこの決断に至りました。

ーーーそれは今後の継続も考えてということですか?

近藤 そうですね、昨年、一昨年はチケット代はなかったので比べられてしまうかもしれないけど、イベントとしてのクオリティーと来年からの継続のことも考えて、できるだけ長く続けられるように今年からチケット代をいただくことにしました。

“最新作のリリースタイミングで呼ぶ”

ーーーホステス・オールナイターだけでなく、サマーソニック、ソニックマニアにも所属のアーティストが出演されていますが、そこの割り振りはどんなことを意識していますか?

近藤 ソニックマニアとサマーソニックはもちろんこっちでもプッシュはするんですけど、最終的な判断はクリエイティブマン側なので、こちらでブッキングなどをすることはないです。例えばソニックマニアに出演が決まったフォーメーションは完全にネクストカサビアンという感じの音ですし、来日のライブもすごい良くて、これはでかいところでやってもらうしかないな、と思ってプッシュしました。

オールナイターは、イベントに“最新作のリリースタイミングで呼ぶ”というコンセプトがあるので、リリーススケジュールとにらめっこしながら、ヘッドライナーをまず決めて、そこからこのアーティストとこのアーティストの組み合わせ面白いよね、という風にブレインストーミングしていきます。

ーーーやっぱりサマーソニック、ソニックマニア出演というのは大きな影響力がありますか?

近藤 ありますね。同じステージだから自分の観たいの以外も観てみようとかいうことがあるし、来場者数も多いので。オールナイターもそういう側面が大きくて。知らないアーティストでも観てもらえば、絶対好きになっていただける自信のあるアーティストしか呼んでいないです。

ーーーさっきのお話で言うと今年の軸は、セイント・ヴィンセントと、モグワイの2組ですね。

近藤 今年のアーティストはライド、ザ・ホラーズ、ビーク>、シガレッツ・アフター・セックスと例年に比べて音楽的にダークなんですけど、元々仲がいいバンドが多くて。モグワイとライドが元々親交があるとか、ビーク>のジェフ・バーロウはザ・ホラーズをプロデュースしてたり、というつながりがあって、例年に比べるとそこら辺のストーリー性も面白いのではないかと思います。その中でもセイント・ヴィンセントは異質といえば異質なんですけど、そこに食いこんでも違和感がないアンダーグラウンドの女王というか、そのミスマッチ感も私は個人的に好きで。ロックヒーローみたいな感じですごくいいんですよね。

セイント・ヴィンセント

ーーーでは今年のテーマは「ダーク」な感じですか?

近藤 そうですね。トム・ヨークやフランツ・フェルディナンドとスパークスみたいな、分かりやすさはこれまでと比べるとないと思うんですけど、一個一個単体で見ていったときに、キャラが立ってるのは今年が一番かなと思います。

ーーー深夜帯という時間帯も意識していますか?

近藤 意識してます。昼間に出しづらいアーティスト、例えば今回で言うとブランク・マスとか昼間に出したらシーンとなると思うんですけど、夜中だったら絶対かっこいいと思ってます。彼は「ライブやるよ」と言ってくれたんですけど、「やるけど、デシベル制限があったらできないからね」と言っていたので期待していてください。

ーーーそういったアーティストは深夜だと観た後味も違いますよね。

近藤 そう!夜中なので、もちろん体力は消耗するとは思うんですけど、昼間に見るのとは絶対違うよさがありますね。ザ・ホラーズとかも時間帯も相まってよりドロドロな感じで。

ーーーもし「あんまり詳しくないけど興味がある」という人に、近藤さんがまずおすすめするとしたらどのアーティストでしょう?

近藤 やっぱりセイント・ヴィンセントは聞いてほしいですね。あとは…全部聴いてほしい(笑)。それぞれキャラが立ち過ぎてて。でもモグワイとかだと難しいと思うので、ライドとかザ・ホラーズはライブもそうですけど音源の迫力もあるので、これ夜中に見たら最高だろうなと感じてもらえると思います。

アーティストブッキングの裏話&見所

ーーーセイント・ヴィンセントはツアー1公演目ということですが、その次の公演まで結構あいてますよね。

近藤 2カ月ぐらいあいて本格的にワールドツアーを開始するのは10月からですね。半年以上前からずっと「来てほしい」とオファーはしていて、やっと決まりました。ウィークエンダーでヘッドライナーはやっているので、次はもっと規模の大きいHCANのヘッドライナーでという思いがあったので。誰を呼ぶかというアイデアは私や他のスタッフからも出すんですけど、アーティストの出演交渉はうちの社長が1人でやっていて、いつのまにかオファーしていたんです。大ファンのようですね。私も大好きなんで、決まった時はうれしかったですけど。

ーーー今年はシューゲイザー系バンドの復活が盛り上がっていますがライドがこのタイミングで観られるのは貴重ですよね。

近藤 ライドは新作出したばっかりでいろんなところからオファーが来ててひっぱりだこだったんですよ。うちも積極的に声を掛けてたんですけど、モグワイのスチュアートがメンバーとは友達で、モグワイはすでに出演が決まっていたのでスチュアートからも「出ようよ」とプッシュしてくれていたみたいで。それもあって、オールナイターに出てくれることになりました。

ーーー元ポーティスヘッドのメンバーであるビーク>のジェフ・バーロウは今回が初来日なんですね。

近藤 そうなんです、これまで来日は何度か決まっていたんですが直前でキャンセルになってしまって。ビーク>に関してはジェフ・バーロウ本人がすごい日本に来たかったみたいです。発表してから一番PRしてくれてるのも、実はビーク>なんですよ。ジェフ・バーロウが自身のレーベルのTwitterとかでめちゃくちゃ告知してくれて。彼も知り合いの素晴らしいアーティストたちが出演するからという点が大きな決め手になったようですね。ジェフは多分インタビューも今までそんなにやってなくて、気難しいイメージあるじゃないですか。

ーーーそうですね、“トリップ・ホップ”というと怒る、みたいな気難しい人なのかなというイメージはありました(笑)。

近藤 実はそんなこともなくて、日本に来るのすごい楽しみって言ってました。今回の来日で日本のファンとの距離が近づけばいいなと思います。ビーク>ってジェフ・バーロウはプロデュース業もしてるし、他のメンバーもビリー・フラーはロバート・プラントのバンドでベースをやっていたりとか、ウィル・ヤングもソロアーティストだったりするので忙しいし、マイペースなんで最近ではアーケイド・ファイアのサポートアクトとかをやっていましたけどライブも基本的には1カ月に1本くらいなんですよね。ずっとやっているユニットではあるんですけど、不定期なので、次いつ見れるか分からないといえば分からない。今回絶対見ておきたいアーティストですね。

ーーー今年5月に来日したシガレッツ・アフター・セックスはさっそくの再来日ですね。

近藤 彼らはその来日公演がすぐソールドアウトで、ライブがすごいよかったんです。後ろに白黒映画を投影して、ほぼMCなしでノンストップでやり続けるんですよ。まるで映画を見てるみたいな。それを夜中に見るというロマンチックゾーンをぜひ(笑)。

ーーーカップルにぜひおすすめしたいですね。

ーーーそしてレジデントDJであるマシュー・ハーバートもいますが、彼は今年も転換中のDJはやられるんですか。

近藤 その予定です。彼は今年3年目なので、違うことをやるって意気込んでるらしいですよ。音楽も実験的な人だから、同じことをやりたくない、DJでもただ音楽を流すだけということに常々疑問を持ってる人なので、今年は違うことをやりたいそうです。私も当日まで実際にDJをどんなスタイルでやるのか分からないんですよ。でもハーバートのDJは絶対にはずさないのでそこは信頼しています。

ーーーあとはモグワイは9月の新作に先駆けて7インチのアナログが出ますし、ザ・ホラーズも新作リリースが発表されましたね。

近藤 モグワイはヘッドライナーとして来日するので日本のファンに特別なプレゼントとして7インチをリリースしたいと話したらバンドが快くOKしてくれて、アートワークも日本限定仕様なんです。ザ・ホラーズはジャケ写に日本語で「ザ・ホラーズ」というのと、歌詞の日本語訳翻訳が入っていて、多分日本の昔のサイケバンドのLPをイメージしてると思うんですけど、アナログの帯とか。アルバムの内容もすごくかっこいいので、どんなライブなのか楽しみです。

ーーー色々お話を聞くと全部見たくなっちゃいますね。

近藤 1晩で8組なのでどうしても被ってしまうところはあるんですけど、なるべく少しずつでも全部観られるようなタイムテーブルは意識して組んでます。こんなタイムテーブルだったらいいな、というのを考えてもらうのも楽しいラインナップじゃないかな。

ーーーいろいろ見所をお伺いしましたが、最後に参加する方や参加を迷われている方にメッセージをお願いします。

近藤 何を見ても面白いというのが今年のラインナップの強みです。夜中なのでハードルが高いと思ってる方もいらっしゃるかもしれないですけど、室内だしタイムテーブルも無理のない範囲で組んでいるので、気軽に遊びに来てほしいですね。バーエリアやレインボーステージ脇のスクリーンでもホステス一押しリリースのミュージックビデオをかけたりと一晩中音が鳴り続けてる環境は毎回心掛けているので、ちょっと贅沢なナイトアウトをする感覚で来てほしいと思います。
 


HOSTESS CLUB ALL-NIGHTER
2017年8月19日(土)
会場:千葉 幕張メッセ

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