Basement Jaxxインタビュー ”Peace One Day”ライブへの思い

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9月21日、World Peace Day (国際平和デー) にロンドンで開催されたBasement Jaxxのライブ。このライブは、NPO法人のPeace One Dayと協賛し、World Peace Dayの浸透を目的に企画されたチャリティーライブだった。Basement Jaxxの呼びかけで、合唱団、ジャズピアニスト、韓国のバンド、バレリーナ等の全く異なるジャンル、スタイルを持つ総勢110名のパフォーマーが集い、作り上げられたステージ。一見、雑多な要素を詰め込んだようにみえて、全てが1つに繋がっていく。想像を遥かに超えるエンターテイメントを作り上げたBasement JaxxのFelix Buxtonに、ライブの裏に隠された思いを探った。

インタビュー記事の前に

Basement Jaxxとは?
UK出身、Felix BuxtonとSimon Ratcliffeによって結成され、1999年発売の 『Remedy』で全英初登場1位を飾りデビュー。2005年グラミー賞でベスト・エレクトロニカ・アルバムを受賞歴もある世界的なアーティスト。ハウスをベースに、様々なジャンルの音楽を組み合わせて独自の世界観を作りだす。ライブにおいては、2人に加えて、バンド、ボーカル、ダンサーが彩りを添えて、まるでミュージカルのようなステージを作り上げる究極のエンターテイナー。

Basement Jaxx

Felix BuxtonFelix Buxton(Basement Jaxx) プロフィール
幼少期からヴァイオリンを弾き、モーツァルトや世界の音楽に慣れ親しむ。日本の平和で穏やかな雰囲気、心配りをする文化をリスペクト。ちなみに、京都の鞍馬がお気に入りスポットだそう。

「ジャンル、文化、言語、人種の壁を壊したかった」

―この夏も数多くのフェスティバルに出演されていましたが、夏の集大成にWorld Peace Dayにチャリティーライブを開催された事には、何か特別な思いを感じました。どのような思いだったのでしょうか?

Felix「World Peace Dayっていう素晴らしい日がある事について、沢山の人に知ってもらいたいと思ったんだ。World Peace Dayって、戦地での平和や停戦だけの特別な話ではないんだよね。家庭、人間関係、学校、仕事等の日常生活の中で平和について考える事が必要だと思う。まず1日から始めて、2日、3日と続けていく事。小さな事だけど、それが、世界の変化に繋がっていく。今がまさにそのアクションを起こす時なんじゃないかと思って、World Peace Dayにライブをやる事にしたんだ」

World Peace Day

―World Peace Dayを知ったきっかけは何ですか?

Felix「去年『Power to the People』という曲をリリースしたんだけど、丁度その頃に、Peace One Day*の活動を知って、代表のJeremyにコンタクトしたんだ。

*Peace One Day: UKの俳優・映像作家Jeremy Gilleyが立ち上げたNPO法人。 9月21日をWorld Peace Dayとし、停戦と非暴力を求める提案をし、2001年に国連総会で受け入れられる。World Peace Dayを広めるために、継続的に活動中。詳細はTED – Jeremy Gilleyのスピーチ(日本語字幕付)をチェック。

JeremyのWorld Peace Dayの考え方や活動と、僕の思いがリンクしていると感じた。僕は音楽を通じて、ジャンル、文化、言語、人種の壁を壊したかったんだ。ジャンル、文化、言語、人種なんて関係ないと思わない?みんな繋がっているんだよね。1人1人が行動すれば、世界は変わる。だから、皆で何かアクションを起こそうよっていう、すごくポジティブな思いがあったんだ。

『Power to the People』では、世界中の人達に自分の言語や楽器で演奏をしてもらうというコラボレーションをしてね。パラグアイのThe Recycled Instruments Orchestra of Cateura(廃材で作った楽器で演奏しているオーケストラ)、日本の雄勝復興輪太鼓、UKのGospel Essence Choir等、色んな国の人が奏でる音を重ねて1つの曲にした。ジャンル、文化、言語、人種が音楽の中でうまく混じり合って、全く違う物に昇華した。去年はこのコラボレーションのバージョンをWorld Peace Dayにリリースして、売上を寄付したよ。去年から少しずつアクションを起こしていたんだ」

―なるほど。これまでの流れがあって、今年のWorld Peace Dayには、約110名のパフォーマーが参加したライブへと繋がっていったんですね。

Felix「そう。110名ってすごいでしょ?ステージに入りきらないくらいだよね(笑)。自分でも不思議だけど、今回のライブは自然な流れで色々と決まっていったよ。お金とかは関係なしに、何かをやりたいっていう、ポジティブな気持ちの人達が集まって、ライブが作り上げられたんだ。商業的な物ではなくて、純粋な気持ちに溢れていたんだ。皆がその場にいる事を心から楽しんでいたね!」

「人生最高のライブ」

―今回出演したパフォーマー達や演目のエピソードを教えてもらえますか?

「Lights Go Down」 – Linda Lewis feat. London Contemporary Voices

Felix「『Lights Go Down』は『Crazy Itch Radio』 (2006年発売アルバム)の中で、シンガーのLinda Lewisが歌ってくれた曲なんだけど、たまたまこの夏イビサでこの曲が流れているのを聞いたんだ。そしたらLinda から丁度タイミングよく別件で連絡があって。Linda、歌って! ってなったの。ライブ2週間前だったけどね(笑)。

当日は、London Contemporary Voices(合唱団)の美しいハーモニーとLindaの声が重なって、幻想的なシーンだった。London Contemporary VoicesはジャズピアニストのRobert Mitchellと一緒にジョン・レノンの『Imagine』も歌ってくれたんだけど、感動して思わず涙腺が緩んだよ」

Linda

「Power to the People」 – The 2 Malinga and SIKH

Felix「『Power to the People』には、ボーカルのVulaと彼女のお父さんがコラボした『The 2 Malinga’s Zulu Mix』というバージョンがあるんだけど、今回は初めて2人がステージで共演してくれたよ。Vulaのお父さんはSaul Malingaといって、南アフリカのアーティストなんだけど、お父さんと娘がステージで共演って、なかなかないでしょ?Vulaは、このライブが人生で最高のライブだったと言ってくれたし、見ている人達にも心温まる物があったね。それから、SIKHの二人もバックで楽器を演奏してくれてね。ライブの後に、ポジティブなライブに参加出来て本当に嬉しかったと言って、家族と共にマントラを歌い始めてさ。その光景が神々しくて、心から感動した。宗教の違いって時に難しい事もあるけれど、根底にあるものは皆同じだって改めて感じたよ」

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NOREUM MACHI

Felix「このライブの前日に韓国フェスティバルに行ったんだけど、NOREUM MACHIを見て、是非参加して欲しいって言ったんだ。突然でしょ?(笑)ニューウェーブだけど、伝統的な物がベースになっていて、アーティスティックなんだ」

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The London Ballet Company

Felix「ギタリストAndreaとThe London Ballet Companyがタンゴでコラボレーションしたんだ。息がぴったり合っていて、妖艶な雰囲気を醸し出していたね」

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この日のための特別な演目だけではなく、Basement Jaxxのヒット曲も演奏。
「Where’s your head at?」では、Felixが歌い、曲の中盤からバンドメンバー、ゴリラの格好をしたギタリスト、バックダンサー、バレリーナも含めて踊り狂う。観客も大盛り上がり。

WHYA

WYHA

ラストは、出演者総出で歌って踊った「Bingo Bango」。
今回紹介したエピソード以外にも、ドラム缶を叩いて演奏する20代から70代までのバンドで、オリンピックでも演奏したPandemonium Drummers 、Unicornのダンサー達、コメディアン、サウンドヒーラー等パワフルなパフォーマーがステージを埋め尽くした。

bingo

「WHO WILL YOU MAKE PEACE WITH?」

-最後に、日本に向けてのメッセージはありますか?
Felix「来年のWorld Peace Dayに向けて、何したい?一緒にWorld Peace Dayの考え方を広めていこう!WHO WILL YOU MAKE PEACE WITH?」

VULA
*Felix撮影 ボーカルのVulaの写真

ライター後記

Basement Jaxxは前述のようにジャンルの垣根を越えた音楽を基としているが、今回のライブでは、“Make peace”というビジョンに集ったパフォーマーと観客が、Basement Jaxxの音楽の彩度を更に高めていた。プロ、アマ、パフォーマーと観客の垣根もなく、会場にはポジティブな空気が流れていた。World Peace!というのは仰々しい話に聞こえるが、大切な人をMake peaceする、自分に出来る小さなことから始めて行けば、沢山の人が集まった時に大きな流れに変わる。Felix Buxtonの言う、ジャンル、文化、言語、人種を壊すという言葉が、体現されたライブだった。

Official Website
Basemet Jaxx
Peace One Day