【サマソニ東京ライブリポート】WONK

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「クラブに入り浸っていたら、いつの間にか隣にジャズがいた」という状況が今の音楽シーンにはあると思う。そもそもジャズとヒップホップは分離したカルチャーではなかったのだが、なぜかバラバラになってしまった。そんな中、ロバート・グラスパーやサンダーキャットが現れて以降、急速に両者の再解釈・再定義が始まっている。格式が高いと思われたジャズを、アングラなフロアに持ってきてくれた。彼らが現れるまでは、ジョン・コルトレーンがオルタナティブな音を鳴らしていることも知らなかっただろう。

それを日本の最先鋒で実践しているのが、WONKである。揺れるビートに、即興的なグルーヴ。『1914』では長塚健斗(Vo.)が大胆にリズム隊を引っ張る姿も見られた。ジャズのインプロビゼーションを持っているが、個々の役割がしっかりしている印象を受ける。バンド間に確固たる信頼関係が窺えた。それはサポートメンバーの小川翔(Gt.)と安藤康平(Sax.)にも言えるだろう。新曲の『Promise』ではそれがより強固なものになっていた。スリリングにしてメロウ。

素養の深さも、この世代では群を抜いている。ダリル・ホール&ジョン・オーツの『I Can’t Go For That』のカバーを披露し、年季の入った音楽ファンを唸らせた。インターネット以降すっかり語られることがなくなった文脈や歴史というものを、彼らは再定義するようである。僕も同世代だが、いまだにレコード屋に行くと「ディグる喜び」を感じる。今やマイノリティなのはこちらだろうが、彼らのようなアーティストがいる限り、この幸福は消えはしない。

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