14th LIVE REPORT

CAZZETTE

最近の彼らのサウンドを聴く限り、朝方4時にピッタリなDJプレイを見せてくれるのではないかと思っていました。案の定、だいぶ癒される内容でしたね。ディープ・ハウスとプログレッシブ・ハウスの真ん中を射抜くようなスタイル。欲を言えば、マウンテン・ステージのようなオオバコではなく、中規模の会場で聴きたかったですね。CAZZETTEの時間帯は、「ステージ」というよりも「フロア」と言ったほうが良さそうな雰囲気でした。

しかし、彼らがただで気持ちよくさせてくれるはずもありません。「Blind Heart」も「Sleepless」もかけてくれましたが、どちらもリミックス。しかもメチャクチャかっこいい!BPMも125ぐらいなので、なかなかのテンポですね。疲弊しきった足腰に鞭打ち、上手く言葉にできない快楽に酔いしれておりました。最後にRobin Sの「Show Me Love」を繋ぐという、一切妥協しない職人気質なところも渋いです。Clean Banditを意識してのプレイでしょうか。

CAZZETTEにもお客さんにも、そこはかとなく不完全燃焼の感が漂っていたので、また別の機会に観たいですね!EDMにもハウスにも振り切れる柔軟性を持っているので、日本国内でも引く手数多だと思います。

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DILLON FRANCIS

ポーター・ロビンソンのパフォーマンスを見終わってから、走ってディロン・フランシスのもとへ。

「そんなに慌てるなよ」とばかりに、彼らしいコメディタッチな世界観が迎えてくれました。スクリーンに映し出される擬人化キュウリが、「F**k Dillon Francis!」とか言ってます。映像は全体的にコストパフォーマンスが良さそうでしたね。ディロン節が満載な演出、僕は好きです。

一口にEDMと言っても、現在のシーンは実に多様化しています。その中で、トラップ系のトラックメイクがかなり流行っていますね。今回のディロンのプレイは、そんなトレンドのド真ん中を突き進むような内容でした。代表曲の「Get Low」がそもそもトラップ寄りではありますが、実際の彼のパフォーマンスは更にディープです。そのあまりにも重い低音に、内臓を鷲づかみされました。もちろん「Get Low」も繋いでくれましたが、だいぶケオティックな様相でしたよ。バックストリート・ボーイズの「I Want It That Way」をここで持ってくるのですから恐れ入ります。「おふざけキャラ」が定着して久しいですが、本来の意味で遊び心に長けた人なんだと思います。ラストの曲が盟友であるDJ Snakeの「Turn Down for What」だったことも、そこから来ているだとすれば大いに納得できますね。

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PORTER ROBINSON

この人を表現するのに、もはや「親日家」という言葉では足りませんね。ここまでくれば立派な「知日家」です。恐るべきサブカルモンスター。インスパイアされた先にあるモノの輪郭がはっきりとしており、なおかつそれに対して凄まじい愛情を持っているのも分かります。子供の頃、街中ですれ違っているのではと思うほど、シンパシーを感じるステージでした。

日本アニメのテーマソングやゲーム音楽を、惜しげもなくサンプリングしています。ゼルダの伝説の「嵐の歌」を使ってくれたのは、本当に嬉しかったですね。何の違和感もなく「Sad Machine」に落とし込んでいました。彼のストーリーテリングの巧みさも手伝って、この時点でだいぶ涙腺を刺激されておりましたよ。何より驚いたのは、やなぎなぎの「春擬き(はるもどき)」を「Divinity」とのマッシュアップで使ったことですね。これがもう、最高にクールでした。今や星の数ほど存在するアニソンマッシュアップの中でも、群を抜いてクオリティが高いと思います。さらに、彼のオタク魂が煌めくのは音楽に限ったことではありません。VJがスクリーンに映し出す映像も極めて日本的でした。80年代~90年代に一世を風靡したドット画でストーリーが紡がれるかと思いきや、突如登場するモダンなアニメ。そのどれもが日本人の琴線に触れるものです。これだけ日本を愛してくれると、僕たちも全力で応えたくなりますね。

17日(月)、リキッドルームにてポーター・ロビンソンの単独公演があります。ソニックマニアでのパフォーマンスを見逃した方は、ぜひチェックしてみて下さい。

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KREWELLA

はい。この美人姉妹には色々ありました。2014年の末に「Say Goodbye」という曲を発表しましたが、音楽的にも、これまでの彼女たちのサウンドとは明らかに異質です。以前からメタルっぽいところはありましたが、この曲ほど表立ってはいませんでした。イントロのリフレインからだいぶ尖っております。ああ、もしかしたら彼女たちは本当に分岐点に立っているのかも、などという想像を巡らせておりました。

そこで今回のソニックマニア。なんとDJ(BtoB)+バンドセット。いよいよ確信に近づきつつありますが、ここは落ち着きましょう。ライブを観る前に妙な先入観を持ってしまいます。正体がよくわからない不安を抱えつつ、いざクリスタル・マウンテンへ・・・。

圧巻。「Helter Skelter」で幕を開けた彼女たちのショーは、生歌全開でひたすらエモーショナルでした。まさしく激情。続く「Live For The Night」では、観客のボルテージも最高潮に達しておりました。バンドサウンドがよく効いているんですよ!ノイジーなギターと、超絶パワーヒッターなドラムが彼女たちを支えていました。姉妹によるBtoBも見事です。Dyroの「Wolv」など、こってりしたEDMをかけたかと思えば、Blurの「Song 2」のようなロックナンバーを挟んできます。果てはハードスタイルにまで及んでいましたね。こう書くと「ごった煮ミックス」のようにも見えますが、不思議な統一感はありましたよ。肝心な「Say Goodbye」はと言うと、やはり一際バンドサウンドが映えていましたね。唸るギター!ドラムは乱打乱打!もう止まりません。ニュー・クルーウェラの誕生を目撃したような気になっております。

個人的には、今回のソニックマニアのベストアクト。

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THE PRODIGY

会場にサイレンにもにた警戒音が鳴り響きながら暗転すると、ステージのバックに現れたのはニューアルバム『The Day Is My Enemy』のジャケットにもなり、MVの中では人を獣に変えてしまうあの赤いキツネの姿の大きなプリント。何とも言えない顔でオーディエンスをじっと見つめています。

「オマツリ、トーキョー!」と現れた、リアム、キース、そして毛皮のフードを被ったマキシム!そして初っ端から「Breathe」をかまし、「Nasty」、「Omen」といったPRODIGYならではの名曲を立て続けに演奏。観客は激しく体を揺らして踊りながらも、満面の笑みを浮かべているという、まさに狂宴といった様子です。

「The Day Is My Enemy」では、本人たち以前インタビューで答えていた「ピュアな暴力的エネルギー」を、体で理解させられました。テンポこそ以前よりスローな曲でしたが、重いサウンドのひとつひとつが内蔵にえぐるようで、体の内部に荒々しい音が詰め込まれるような気分になります。

その後も「Voodoo People」、「Invaders Must Die」と、オーディエンスが休む間も与えないセットリストを披露で会場のテンションは上がりっぱなしに!「Medicine」ではマキシムが全員を床にしゃがませ、同時に天高くジャンプ!それで何かが弾けたのか、何かに取り憑かれたように全員が踊り、会場が揺れます。

その後、しっかりアンコールも披露。さらに進化したTHE PRODIGYのサウンドを体に植えつけられライブでした。

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Madeon

相変わらず、デッドマウスが他のEDMプロデューサーたちをディスりまくっています。「お前らはステージ上でプレイボタンを押しているだけだ!大金もらってんだから相応のテクニックを見せてみろ!」と、EDMのパフォーマンスのあり方そのものに疑問を感じているようですね。先日もアヴィーチーと火花を散らしていました。

が、そんな罵り合戦とは全く別次元にいるアーティストがいます。それがマデオン。この人のパフォーマンスは、デッドマウスが批判する「ボタン・プッシャー」のそれとは一線を画します。“Launchpad”と呼ばれるコントローラーを自在に操り、独特のステージを展開します。サンプリングした音源を組み合わせ、自分の表現として新たに昇華するんですね。使いこなすのに相当な技術を要するという点で、バンドマンが楽器を演奏するのと何ら変わりないわけです。今回のソニックマニアでも、その才能を遺憾なく発揮しておりました。

大きく分けて3つのパートに分かれます。“The City”から始まるEDM劇場。Nonsenseで幕を開けるトラップワールド。そして終盤に入り、ようやく新作アルバムの「アドベンチャー」的な世界へと突入します。同作品のジャケットが映像として使われたのは、本当に最後の段階です。オープニングとして使われることが多い“Technicolor”もこのフェイズだったことも、何か意図を感じさせますね。次の日への布石だったのかも?マリン・ステージに行った方、如何でしたか?

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MARILYN MANSON

ステージがすべて隠れてしまうほど、白いスモークがもうもうと立ち込めるなかから、うっすらと黒い姿を表したマリリン・マンソン。
スモークが照明で赤く染まると、鼓動のようにも聞こえる重低音が会場に響き、全貌を表したマンソンは、不敵にうっすらと笑みを浮かべているようにも見えました。

はじまりはニューアルバム『The Pale Emperor』に収録され、不気味なMVも話題となった「Deep Six」。登場を待ち焦がれた観客は、叫びにも近い歓声でマンソンを迎えます。そして「Disposable Teens」「mOBSCENE」とハードナンバーを連発。暗いステージのなかでシャウトするさまや、年を追うごとに風格を増すマンソンの姿は、まさに闇の帝王といった様子。

こちらもニューアルバムに収録された「Third Day of a Seven Day Binge」からは、重く響くナンバーを数々と披露。会場全体で奏でるクラップが不気味に響きます。

終盤、マンソンは牧師のように壇場に上がり、手には聖書らしき一冊の本。ゆっくりと本を開くと、開いたページが燃えはじめました!マリリン・マンソンらしい演出に、会場では歓喜の声があがります。そこから壇場で身をよじるように「Antichrist Superstar 」を熱唱。
ラストはフロアに降り、オーディエンスのなかで「The Beautiful People」を叫ぶように歌い上げ、圧感のステージは幕を閉じました。

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