音楽とテクノロジー、VRと音楽の未来

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先日、ついにSpotifyが日本に上陸しました。Apple Musicを筆頭にストリーミングサービスは爆発的に成長し、一昔前では考えられないほど気軽に音楽を楽しめる、便利な世の中になりました。
他にも機械学習技術、ドローン、ロボットアームを使った舞台演出や、最近では人工知能DJの研究が進んでいたりと、もはや音楽とテクノロジーは切り離せない関係となってきました。
そんな中で、10月13日はPS VRの発売日となります。

今更聞けない?そもそもVRとは

VR(Virtual Reality)は、バーチャルリアリティ・仮想現実という意味です。HMD(ヘッドマウントディスプレイ)を装着し、コンピュータによって合成した映像・音響などの効果によって3次元空間に身体が投影され、本当にその空間へ入り込んだような感覚を生じる技術のことです。

vr
こんな写真、最近よく見かけませんか?2016年は一般ユーザーに向けたHMDおよびコンテンツがリリース開始されるということで、「VR元年」なんて言われています。
360度3D世界に入り込むことができ、現実そのものを人工的に創り出すVRに対し、AR(Augmented Reality)という現実の映像や音をデジタル情報に重ね合わせる技術もあり、これは今年発表され大きな話題となったポケモンGOが良い例です。

音楽を展示する

「音楽とVR」というキーワードで思い浮かぶのが、今年の6月末、日本科学未来館にて開催された「Björk Digital ― 音楽のVR・18日間の実験」ではないでしょうか。
この展示は、あのビョークが世界の映像クリエーターやプログラマーとのコラボレーションにより実現した、アルバム「ヴァルニキュラ」収録曲のVR映像作品などを体験できるという内容で、「Stonemilker」の360度映像や最新のVR映像作品も展示されました。ビョーク本人が出演するオープニングDJイベントが開催されたことも話題になりましたね。

björk: stonemilker (360 degree virtual reality)

この展示で見ることができた3つのVR映像のうち、1つがこちらです。当時すでに公開されていた映像ですが、HMDとヘッドフォンを付けてくるくる回りながら、至近距離で見るビョークは新鮮でした。だってライブ会場で最前列で見るより、ずっと近くで見れるんですよ!ファンにとっては嬉しいですよね。ちなみにこのPVはビョークの誕生日に撮影されたものだそうです。

360度ライブストリームやVRMVの登場

毎年、ライブ配信を行っているコーチェラ・フェスティバルですが、今年は初の360度のライブストリーム動画を行ったことも記憶に新しいのではないでしょうか。ユーザーは自宅に居ながら好きなアングルで、パフォーマンス映像を楽しめるという新しいサービスです。YouTubeはこれまでも360度動画を配信してきましたが、音楽ライブでのライブストリーミングは初の試みだったそうです。
従来のライブ配信と違う点は、例えば客席の最前列にカメラがセットされた場合、アーティストが自分に向かって歌ってくれるような感覚を味わえたり、好きな視線でライブも観られるため、ドラマーだけをずっと見ていられるといったことも可能になります。

アーティストのMVでもこの技術は使われています。
今年やっと来日したアヴィーチーのこちらのMVは、現在もっとも有名なVRMVの一つです。視聴者はあたかものんびり座ってスクリーンを見ながら、周りを見回しているかのような気分を感じることができます。

Avicii 「Waiting For Love (Jump VR Video)」

カナダ人シンガーのザ・ウィークエンドは、VR映像専門スタジオUnited Realitiesの映像監督Nabil、そしてGoProとApple Musicと連携して「The Hills」のリミックスのための4KVR動画を制作、公式動画としてYouTubeで公開されました。

The Weeknd 「The Hills remix feat. Eminem (A Virtual Reality Experience)」

海外アーティストの作品の方が有名かもしれませんが、実は世界で初めてVRMVを制作したのは、日本人アーティストの倖田來未。2014年末にOculus Riftを用いてこちらのMVを制作し、「TOKYO DESIGNERS WEEK 2014」にて限定公開されました。

倖田來未「Dance In The Rain -360°music video- (from New Album 「WINTER of LOVE」)」

先日発表した約8年ぶりのアルバム「Fantôme」が大ヒット中の宇多田ヒカルもVRMVが存在します。歌っている本人はもちろん、周りのセットや撮影スタッフまで観ることができるので、完成版と比較しながら見るとおもしろいです。

宇多田ヒカル「花束を君に」360度メイキング

VRMVは他にもテイラー・スウィフトの「Blank Space」、U2の「Song For Someone」、Foalsの「Mountain At My Gates」、Squarepusherの「Stor Eiglass」などが話題となっています。今後、他のアーティストでも作成され、徐々に増えていきそうですよね。楽しみに待ちましょう。

世界初!ライブVRチャットが誕生

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先日、FacebookのCEOマーク・ザッカーバーグ氏が、「Oculus Connect」カンファレンスで同社のVRチャットを世界初公開しました。「Oculus Rift」というヘッドセットを装着し、専用ハンドルコントローラー「Touch」を手に取って、自身に似たアバターを使用し、リアルタイムでチャットを披露。

その様子がこちら

Here's the crazy virtual reality demo I did live on stage at Oculus Connect today. The idea is that virtual reality puts people first. It's all about who you're with. Once you're in there, you can do anything you want together — travel to Mars, play games, fight with swords, watch movies or teleport home to see your family. You have an environment where you can experience anything.

Mark Zuckerbergさんの投稿 2016年10月6日

このVRチャットでは、参加者全員がヴァーチャルのスマートウォッチを操作し、これによって新しいVR空間に移動したり、動画を表示したり、VR空間に参加していない人とも動画通話をしたりできます。チェスやトランプ等の簡単なゲームのほか、なんと空間上に描いた剣を手に取ってチャンバラごっこをすることも可能。Messengerでテレビ電話をかけると、VR空間内のディスプレイに通話相手の映像が表示されたり、VR空間内で写真撮影してその写真を自分のFacebookフィードにすぐに投稿することもできます。

システムの正式名もリリース日も明らかにされていませんが、実用化される日はそう遠くなさそうですね。VRはもはやゲームや音楽の範疇を超えました。

VRの発展とライブ事業の未来

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VRを体験したことがある方はわかると思いますが、HMDを付けてヘッドフォンもすると…頭が重いですよね。あれをライブ中ずっと被ってるのは正直厳しいです。まずはHMDがもっとコンパクトになれば、自宅で気軽にVRが楽しめるようになります。ゆくゆくはライブもVR専用のチケットができるかもしれません。コーチェラ以外の海外フェスや、日本でもフェスやライブで活用されると大変便利だと思います。

ライブ配信が当たり前となり、一人一人がスマホを持つように、HMDを持つようになれば、VRはライブよりも良いと感じるユーザーも出てくると思います。ライブ会場で見るよりも自分に近いところで、そこにいるような体験ができるなんて贅沢ですもんね。