【Hostess Club Weekender Day 2】UKロックからの使者と、LAの麗しき音響派

  • twitter
  • facebook
  • line

なんというラインナップ!新旧UKロックでまとめてくるかと思いきや、そこはホステス。良い意味で統一感がない。最後の最後にジュリア・ホルターをつっこんで来るあたり、インディー・シーンを支え続けてきた彼らの矜持が感じられる。個人的には第7回(モグワイとザ・ナショナルがヘッドライナーだった)が、過去最高に刺激的だったが、今回はそれに匹敵するぐらい面白くなりそう。

Julia Holter

最新アルバム“Have You in My Wilderness”がそこかしこで大絶賛されている。ピッチフォークがベスト・ニュー・アルバムに選定し、NMEMOJOも軒並み高評価を与えている。クラシックの素養もある彼女が打ち立てた、エクスペリメンタル・ポップの金字塔。間違いなく傑作だ。「これまでで最もプライベートなアルバム」と本人が語るように、本作では惜しげもなく自身の内面を曝け出している。人懐っこい柔和な雰囲気もそこに起因するのかもしれない。

同じく絶賛された前作“Loud City Song”が映画的・劇的であるのに対し、こちらはよりドキュメンタリーなタッチで作られている。実験志向でドリーミーな曲調は相変わらず健在だが、今回のアルバムは極力生の質感にこだわったようである。それがかえってシュールな印象を与える結果になったのは、本人の意図するところだろうか。それでいて、心地よくて、温かい。


The Bohicas

ジュリア・ホルターと同じく、ドミノ・レコーズ所属のロックバンド。筆者と同世代(10代後半~20代前半)の方は、「ドミノっぽい」というフレーズで想起するのはこの手のサウンドだと思うのだが、如何だろう。思春期にアークティック・モンキーズフランツ・フェルディナンドを通過した音楽ファンは少なからず共感してくれるような気がする。今年は彼らに代表されるガレージ・ロックだけではなく、先のジュリア・ホルター、Alex G、ブラッド・オレンジなども好調なようだ。恐るべきレーベルである。

さて、話が逸れてしまった。そんな正統派ドミノ・サウンドをかき鳴らす、ザ・ボヒカズ。今年のフジロックに続いて、早くも再来日公演である。最新アルバム“The Making Of”は、本国イギリスでも徐々に盛り上がりを見せており、BBCレディオ1でかかることも多いようだ。疾走するようなドラミングと、ソリッドなギター・サウンドはやはり訴求力がある。シンプルだけれども、彼らから放たれる熱量は膨大だ。


Mystery Jet

何だかよく分からないバンド形態(メンバーの中に親子がいたり)でデビューし、プログレともサイケとも、あるいは直球のブリット・ポップとも解釈できる曲を世に送り出してきた。そんな彼らの前作“Radlands”は、アメリカーナに寄せた内容である。彼らの見てきた景色をそのままアメリカに持ち込み、音楽として消化したような趣だ。個人的には、彼らがリリースしたアルバムの中ではこれが一番好きで、全体通して漂う優しさに癒されていたものである。ジャケットからしてセンチメンタルなのだ。いかにもオースティン然とした、ヴィンテージな色合い。ああ、切ない。

そんな彼らの新作が、来年の1月22日(金)にリリースされる。これがどうやら、自分たちの原点(プログレ)に立ち返るような内容になるらしい。それも「前作を引き継ぐ形で」ということで、否応無く期待は高まるところである。今回の来日公演で新曲を披露してくれるかもしれない。楽しみだ。


Bloc Party

どうせこの動画を辿れば分かってしまうことだから、あえてここで記しておこう。これは彼らの新曲であるが、今のところ滅茶苦茶に叩かれている。曲自体は悪くないのだが、確かにアレンジが・・・。「あばよ、ブロック・パーティー」だの、「これじゃあ、ケリー(Gt.&Vo.)とその仲間たちじゃないの!」なんてことを書かれている。過去に彼らがUKインディー・ロック界隈でぶいぶい言わせていた頃を知っている身としては悲しい限りだ。その上ドラムのマット・トン、ベースのゴードン・モークスがバンドを脱退してしまうものだから、いよいよ窮地に立たされている。

だが、「ケリーのワンマンバンドだ」という批判はあたらないと思うのだ。なぜなら、彼らは元々ケリーを中心にして曲を作り、活動を続けて来たからである。過去のインタビューを見ても分かる通り、根幹となる部分はほとんどケリーの言葉で語られている。曲に関してもそうだ。セカンド・アルバムである“A Weekend in the City”に収録されているナンバー、“I Still Remember”はケリーのパーソナルな部分について歌われた曲だと言われている。当然ながら、マットとゴードンが飾りだったと言いたいわけでは、断じてない。述べてきたように、制作体制が変わっていないのだから、バンドの向きを少し修正すれば、「あの頃のブロック・パーティー」は帰ってくるはずなのだ。日本を含む世界中のファンは、それを待ち望んでいる。

今からブロック・パーティーに接する方は、ぜひ“A Weekend in the City”からどうぞ。オアシスのリアムも絶賛しております。最高傑作の“Silent Alarm”は、その後でお楽しみ下さい。


日本が誇る、インディー音楽の最大の祭典。大型フェスティバルにはない独特な雰囲気を味わえること請け合である。きっと、自分好みのサウンドに出会えるはずだ。


第11回 Hostess Club Weekender
2015年11月22日(日)
2015年11月23日(月・祝)
会場:東京・新木場Studio Coast

<関連リンク>
第11回 Hostess Club Weekender
Creativeman チケット詳細ページ