MOUNTAIN STAGE

D’Angelo and The Vanguard

今まで観たライブの中で最も衝撃的だった。迂闊には言いたくない言葉であるが、あと10年は口にしないと約束するのでご容赦いただきたい。彼の音楽は「ネオ・ソウル」と銘打たれているが、あらゆる黒人音楽を呑み込み、再構築したような内容である。当初はディアンジェロばかりがメディアに取り上げられていたが、ザ・ヴァンガードの超絶技巧ぶりも凄まじい。恐らくこの日のステージを目撃した人が異口同音に言及するはずだ。もはやアンサンブルという域はとうに超えている。どちらが合わせるというわけでもなく、息をするのと同じくらい自然に各々のサウンドが絡み合っていた。これがグルーヴか。

その圧倒的なパフォーマンスは、「Ain’t That Easy」で幕を開ける。ヴァンガードの面々が先にステージに君臨しており、センターマイクのポジションだけが空いている。ニクい演出だ。一度聴いたら耳から離れないリフレインが会場を包み込み、妖艶な雰囲気が辺りに蔓延する。そうして焦らしに焦らして、ディアンジェロ登場。168センチの小柄な体躯が、とてつもなく大きく見える。御大の降臨により、全てのピースを揃えたバンドは誰にも止められない。完璧なコーラスワークに完璧な演奏。1曲目から五感をフル活用せざるを得ない。決してアッパーな曲構成ではないが、頭の天辺から止めどなく快楽物質が溢れ出ていた。「Brown Sugar」では、いよいよ私の脳内麻薬も枯渇するところである。無論、CD音源も素晴らしいが、ライブで聴くこの曲は更に桁違いだ。ディアンジェロとヴァンガードでなければ成立しない高次元のバンドサウンド。外側から見ても分かるぐらい、両者の間には強固な絆があった。インプロビゼーション的な展開に、誰一人として振り落とされることはない。「Sugah Daddy」でもそれは続く。怒涛の展開にオーディエンスも歓喜し、彼らの一挙手一投足に賛辞を送っていた。あっという間にアンコールである。

ソニックマニアも併せて、3日間で最も大きな歓声が挙がっていた。このバンドがどれだけ熱望されていたのか、自分の肌で体感した瞬間である。また、彼らはその期待を優に超えていったのだ。長い長い間の後、再び彼らは舞台へ姿を見せる。披露した曲は、「Untitled」だ。テクニックだけではなく、しっかりとしたストーリー性も見せる。若輩者ゆえに想像の域を出ないが、きっとジェームス・ブラウンを初めて観た衝撃に似ているのだろう。実際にオマージュらしき演出もあった。エンディングでディアンジェロがメンバーに対して見せた優しい表情を、生涯忘れることはないだろう。間違いなく、彼らのパフォーマンスは今後のライブシーンを語る上で外せないトピックになった。

D'ANGELO AND THE VANGUARD

D'ANGELO AND THE VANGUARD

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D'ANGELO AND THE VANGUARD

WALK THE MOON

イギリスの友人に、このバンドを勧めてもらったことがあります。そのころはメジャーデビューしたばかりだったのですが、当時の印象としては「ネクスト・トゥー・ドア・シネマ・クラブ」でした。それがまさかこのベクトルで進化するとは・・・。80年代のディスコ・ナンバーを、現代風にアップデートしたような内容です。温故知新の体現者ですね。80’sに対する僕らの憧れを、リスペクトと愛情を持って代弁してくれました。今回がサマソニ初参戦でしたが、そんなキラキラしたサウンドを余すところなく届けてくれました。

ところで、「Shut Up And Dance」以外にもダンサブルなナンバーはありますよ!「Different Colors」や「Tightrope」などもプレイしてくれましたが、オーディエンス側があまり乗れていないようでした。しかしながら前者は、ライブで聴くとより魅力が滲み出ますね。海外では既にアンセム化しつつあるようです。個人的には「Work This Body」もお気に入り。夏フェスらしい内容も相俟って、体が勝手に動いちゃいました。

ただやはり「Shut Up And Dance」。今回のライブのラストを飾りましたが、一気に会場の熱気が爆発しましたね。揺れるマウンテン・ステージ。Walk The Moonが撤収した後も、この曲を口ずさむグループが多数ありました。

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modestep

Pendulumが6:4ぐらいでブロウステップとロックを融合しているとすれば、Modestepは綺麗に5:5の割合のクロスオーヴァーである。オーディエンスの数はそれほど多くはなかったが、それを補って余りある熱気に包まれていた。なんという迫力。強すぎるキックと破壊的なディストーションから繰り出されるサウンドは、観客の心をつかむのに2分とかからなかった。物凄く緻密に計算された音作りから、音楽的な素養の高さも感じ取ることができよう。断じて平凡なミクスチャーバンドではない。

ブロウステップ系のプロデューサー、Popeskaと組んだ「Another Day」は、その証明として打って付けである。ジョッシュ・フレンドのクリアなヴォーカルに次々と要素が乗ってゆく。そこから火力の高いドロップまで一気に展開されるわけだが、ライブでは更に激しく燃え上がるのだ。元フューネラル・フォー・ア・フレンドのドラマー、パット・ランディが、その技術の高さを見せ付ける。急な転調はお手の物、早打ちテクも遺憾なく発揮していた。CD音源だけでは気付けない、彼らの魅力の一つである。打ち込み系の音とバンドサウンドの見事な邂逅を見た。

あまり評判の良くない最新アルバム、「London Road」からも数曲披露してくれたが、生で聴くとこうも違うかと驚いた。特に「Machines」。これは絶対ライブで聴くべきである。バンドの規模的になかなか難しそうではあるが、可能であればぜひ今度は単独公演で見たい。
MODESTEP

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