【ジャネット・ジャクソン来日公演 ライブレポート】エンターテインメントの神髄を見た。

以前、AndMore!でジャネットのキャリア総復習の記事を書かせていただいた。平成生まれの若造とは言え、彼女への深いリスペクトと愛情を持って筆を執ったつもりである。だが、ジャネット・ジャクソンという究極のエンターテイナーの壁はあまりにも高かった。子供の頃から親しんできた彼女の音楽、ライブだとここまでエネルギッシュになるのか・・・。いやホント、参りました。彼女が今回の来日公演で見せくれたのは、全ての演出が複合的に絡み合った密度の濃いショーと、日本への深い愛であった。

カーネーション

janetからカーネーションプレゼント💋💋 #JanetJackson pic.twitter.com/rD1zHdMWT2

— NANA (@Nana_Aanys) 2015, 11月 21

大阪公演のとき既に話題になっていたが、やはり東京にもジャネットからの素敵な贈り物があった。カーネーションが一輪、会場を訪れた人全員に配られた。何とも粋な計らいである。会場入り口で配られたのだが、この時点で感激したファンも多かったろう。ちなみに花言葉は「無垢で深い愛」だ。

オープニングDJ

今回の「アンブレイカブル・ワールドツアー」に帯同しているDJ Aktive（コモンやナズのツアーDJとしても活躍）、オープニングから飛ばす飛ばす。技巧派ターンテーブリストとしての矜持、辣腕DJとしての知識量が堪能できるパフォーマンスだった。ジャネットの歴代ヒットソングを、カルヴァン・ハリスやディスクロージャーの曲で料理する。珠玉のバラード、“Every Time”をハウス仕様に仕上げてきたのには面食らってしまった。「ここぞ」と言うときに“Rock With U”や“Come On Get Up”をミックスする選曲センス。彼もまたジャネットのディープなファンであることが窺える。格好良かった。

圧巻のジャネット・ジャクソン

Aktiveの熱いDJプレイが終了した後、いよいよ真打の登場である。明かりが落とされ、辺りが暗闇に包まれる。ピリっとした空気感と共に、訪れる狂騒。場内から大歓声が上がる。ステージ上のスクリーンには、巨大なワシの影（“Unbreakble”収録の“Black Eagle”がモチーフと思われる）が映し出された。その影が変身してゆき、やがてジャネットのシルエットに。 恐るべき演出魂だ。この瞬間に場内のボルテージは更に上がる。

そして間髪入れずに“Burn It Up(Ft. Missy Eliot)”→“Nasty”→“Feedback”・・・が続く超豪華メドレーへ。最初の3曲で筆者のアドレナリンは限界突破していた。ジャネットだけではなく、ダンサー、バンド、映像、あるいは音響や照明から繰り出される圧倒的な技術力。それらを理解するのに多くの時間はかからなかった。一糸乱れぬ肉体の躍動、轟音ながら繊細なサウンド、それらに物語を付与するヴィジュアル・・・。その中心にいるのがジャネット・ジャクソンだ。映像でしか観たことがなかった彼女が、目の前で舞っている。この事実だけで何度こみ上げてきたことか。

息をつく間もなく繰り出される名曲たちは、さながら先述のDJセットの延長線上にあるようである。やはりあの瞬間からショーは始まっていたのだ。アップテンポなナンバーは曲間の切り替えが早く、スローなバラードはじっくり聴かせるというライブ構成であった。

断言しよう。生で聴く“Again”はCD音源の80倍は壮大で美しい。ジャネットがシンガロングを促すので野太い声で歌ってやりましたよ（嗚咽交じり）。ここでファンの凄さを痛感したのだが、みんなビックリするぐらい歌える。決して簡単な曲ではないはずなのだが、メロディも歌詞も完璧。長いキャリアの中で、彼女が如何に日本のファンに愛されてきたのかがよく分かるシーンだった。入り口で渡されたカーネーションは、そういう歴史に対する感謝の印でもあるのだろう。そう思うと、また泣けた。

“Unbreakable”がマイケルについて触れた最初のアルバムであるように、やはり今回のライブでは“Scream”がハイライトとなった。ステージを目撃した人の誰もが、ジャネットにマイケルの姿を重ねたに違いない。体の中心から指先に至るまで、この曲における彼女はマイケルの魂を憑依させていた。途中で天高く掲げた人差し指は、彼への力強いメッセージのようであった。ラストナンバーの“Rhythm Nation”に、“Scream”からの繋がりを感じたのは筆者だけだろうか。

ライブ中はほとんどMCがなかったが、最後の最後に日本のファンへの想いを語ってくれた。「私がどれほど日本を愛しているか、多分あなた方には分からないでしょう。初めてここを訪れたのは15歳～16歳ぐらいの頃だったけれど、その時から、みんな親切にしてくれるわ。愛してます」
・・・いやはや、最後まで泣かせる人だった。またいつか、いやぜひ近いうちに、お会いできる日を楽しみにしています。