サマソニ裏方論 グッズ制作編 「ウェブでの販売はしません。手に入るのは、当日、会場でのみ!」

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フェスはアーティストだけでなく、たくさんの裏方スタッフの働きがあって形作られていきます。そんな裏方さんのお仕事にスポットを当てるこの企画、今回お話を伺ったのは宣伝部に所属しつつ、グッズ制作業務も取り仕切る安藤竜平さん。毎年、会場でしか手に入らないオフィシャルグッズを楽しみに足を運ぶ人も多いはず。人気グッズを上手く手に入れるためのコツも伺ってきました。

ーーーまず、安藤さんがクリエイティブマンに入社した経緯を教えてください。

安藤 入社は2006年です。前職はソニーミュージックの洋楽の部署でアシスタントをしていました。当時はアーティストの来日公演で受付をする機会も多く、そこでクリエイティブマンの方と顔を合わせる機会が多かった。そこで顔を覚えてもらい、前職を辞めるときに声をかけてもらったのがきっかけです。

ーーー普段からグッズの制作全般を担当されているのですか?

安藤 普段は海外アーティストの日本公演の宣伝を担当しています。2007年に、「パンクスプリング」と「スプリングルーヴ」のオフィシャルグッズを任されたのがグッズ制作に携わった最初です。年々フェスが増えていって、今は担当しているフェスの数も増えています。今年までグッズの担当は僕ひとりだったんですよ。

ーーーえっ!? それはすごい仕事量では…?

安藤 開催前は家に帰る間もないくらい、根詰めてやってますよ。かなりしんどいんですけれど、当日お客さんが列を作ってまで買ってくれたり、その場ですぐに着てくれたりという光景を目にすると、本当にありがたいなって感じます。フェス興行の中で、グッズの売り上げはビジネス面でとても重要なパートなので、やりがいは大きい仕事ですね。

安藤さん

会場でソールドアウトになることが目標

ーーー毎年、サマソニの物販はすごい人気ですよね。

安藤 会場に来ないとサマソニのオフィシャルグッズは買えないんです。渇望感を煽ると言いますか、あえてウェブ販売はやらない。会場でソールドアウトになることを目標に僕らはやっています。

ーーーたしかに、ウェブでの販売がない方がより欲しくなりますね。どういったグッズが人気なんですか?

安藤 Tシャツとタオルが鉄板です。オフィシャルTシャツのデザインは最近は20~25種くらいあって、タオルもいろいろな種類が充実しています。人気のTシャツは、ひとつのデザインだけで3000~4000枚ほど売れるものもあるんですよ。つまり、Tシャツだけで東京大阪合わせて万単位の数が動きます。その数を会場でしか販売しないわけですから、ギリギリ売り切れるような生産数を決めるのが難しい。すごくプレッシャーがかかります。そのあたりは、これまでのデータに基づきながら考えますが最終決定は、もう賭けですよね。

2016Tシャツデザイン案
▲オフィシャルTシャツのデザイン案の一部。今年はUKを意識したテイストのものが増えるかも!?

ーーー特に売り切れるのが早いグッズはありますか?

安藤 バンドやキャラクターとのコラボものが早いですね。一昨年はディズニーとコラボをしていたものですとか、去年だとサマーソニック×スポンジボブのものはすごく人気がありました。今年はまた違ったコラボものを企画していますのでお楽しみに。まだ告知できる段階ではないんですが…。

ーーー売り切れ必至ですね。そのような限定商品を確実に手に入れるコツのようなものがあったら、こっそり教えてほしいのですが(笑)

安藤 まず、売り場は東京3カ所、大阪は1カ所あって、どの売り場も全種類のグッズを揃えています。東京会場は、マリンフィールド側の売り場に行列ができやすいので少し多めに商品を割り振っています。コラボものなどは初日に売り切れてしまうこともありますが、実は初日と2日目の商品は分けています。なので、初日に売り切れていたグッズでも2日目に買うことはできるんです。とはいえ、初日の方が数は多く用意しています。確実に手に入れたければ、やはり初日の朝イチにほしいものを買ってしまうのが一番確実です。

会場だけじゃなく、普段も使ってもらえるものを作りたい

ーーーお客さんの好みは、昔も今も変わらないですか?

安藤 いや、特にこの数年はお客さんの要求も変わってきているように感じます。さらに、サマソニって出演者のジャンルが多彩でジャンル分けができないじゃないですか。お客さんの好みも多様化してて。例えば、昔は背中に出演者のラインナップが書いてあるものがとにかく人気だったんですが、最近は普段も着られるようなデザインを好むお客さんも増えています。とはいえ、アパレルとして洋服を売るのと、フェスのTシャツを売るのはまったく違うものなんです。いろいろな要望に対応しながらも、ビジネスとして成り立たせるのが難しいところですね。

ーーー毎年、デザインテーマはあるのですか?

安藤 テーマを決めようとした年もあるのですが、結局これだけ幅広くになるとテーマを掲げてやることは難しい。でも、今年はヘッドライナーがレディオヘッドとアンダーワールドなので、そこを意識したUKテイストのデザインが増えるかもしれません。

TAIYO project
▲毎年好例『TAIYO project』のTシャツは今年も新作を展開予定。売り上げの一部は、震災被災地の障害のある人の仕事を支援するために使われる

ーーーTシャツ以外に、なにか特別なものを作る予定はありますか?

安藤 ラインナップは、Tシャツとタオルを軸に、それ以外のものは毎年どれだけ目を引くものを作れるかが勝負。最近だとライトのような光り物だったり、キャップがヒット商品ですね。今年も変わったものを投入しようとは思っているのですが、今は試行錯誤中です。ちょっと変わった形のタオルとか、手軽にお土産で持って帰れるような小物系を検討中です。最近ちょっとやっていなかったんで、今年はガチャガチャを復活させるかもしれません。あとは、大阪限定のグッズを作るのもいいかも。

ーーーなるほど。では、最後に今年もグッズを楽しみにしている方々にメッセージをお願いします。

安藤 家に帰ったらパジャマになっちゃうようなものではなくて、普段も使ってもらえるものを作りたいと思っています。街でサマソニのTシャツやグッズを目にする機会があれば、「今年はサマソニ行くか」と思ってもらえるかもしれない。グッズを通じてサマソニを意識してもらえたら、担当冥利に尽きますね。たまに、単独公演のライブ会場でサマソニTシャツを着ている人を見ることがあります。それがすごく着込んでいてヨレヨレだったりすると、もう嬉しくて。声をかけたくなっちゃいますよ!

text:池田圭(verb) photos:くのまい


サマーソニック2016
2016年8月20日(土)・21日(日)
東京会場:QVCマリンフィールド&幕張メッセ
大阪会場:舞洲サマーソニック大阪特設会場
<関連リンク>
SUMMER SONIC 2016