サマーソニックMC・サッシャさんインタビュー「MCは盛り上げ役というより、快適に事故なく帰ってもらうための案内役」

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今年で17回目の担当となる、サマソニになくてはならないベテランMCのサッシャさん。運営側ともオーディエンス側ともつかぬ中立的な立場で、サマソニを見つめ続けるキーパーソンです。17年で培ったサマソニへの思いや今年の注目アーティストについて、たっぷりとお話を聞きました!

僕の役目は、フェスの運営側とオーディエンスの接着剤

ーー今年で17回目(!!)のMCを担当されますが、最初の頃と比べて、現在のMCのスタイルは、やはり違いますか?

サッシャ 今でこそ音楽フェスにMCがいるのが当たり前になりましたが、僕が始めた時はそういう役割の人がいなかったので、自分の中でモデルがいなかったんですよね。当時を振り返ると、若かったこともあって『盛り上がってるか――!!』『次のアーティストは○○だ!イエーーイ!』…って(笑)。若さという名の愚かさで、叫んでいただけだったな、と(笑)。

ーー(笑!)今はどんな部分が変わりましたか?

サッシャ 40度近い暑い日に次々にビッグアーティストが登場してテンションが上がるのに、ステージとステージの間まで盛り上がると、疲れてしまう。だから、お客さんの温度を感じながら、盛り上がりたいのかなって時は一緒に盛り上がるし、疲れているなと感じる時は体力を温存させるようなMCをするようにしています。オーディエンスと一緒にフェスを過ごす人間として、運営側の人間じゃなくオーディエンス側にシフトしている感覚はありますね。それから、恒例の水まきは、僕に一任されているんですよ、実は!

ーーーおぉ!それはすごい!

サッシャ 特に夕方の時間帯は、急な雨で少し涼しくなったからいらないかなとか、ステージにいる自分の感覚と合わせて判断することが多いですね。水まきに限らず、ステージが終わったタイミングでお客さんの求めているニーズを、運営側にフィードバックなり提案なりしています。それで、放水用のホースが長くなったり、シャワータイプの放水口になったり…。毎年、水まきも進化しています!(笑)。そういうことも含めて、僕の役目は、フェスの運営側とオーディエンスのつなぎ役というか、接着剤みたいなものだと思っています。

ーーーなるほど~。MCスタイルはかなり変化されましたね。

サッシャ 1、2年目の頃は声を枯らしたけど、もうそんなこともありません。それはだんだん年を取ってきて、勢いだけじゃないってところが功を奏している部分もありますが…。時々、遠足に行く時の引率の先生なんじゃないかと思うぐらい(笑)。

ーーみんな、危ないから後ろを見て!前を見て!みたいな(笑)。

サッシャ ほんとにそんな感じですよ(笑)。混んできたらつめてとか、後ろから押さないでとか、運営側から事務的に伝えるより、僕からお願いする方がいいと思うんですよね。MCは盛り上げ役というより、オーディエンスが快適に事故なく帰ってもらうための案内役。MCがいないフェスもたくさんある中、自分には何が求められているのか?ということを自問自答しながら歩んできた17年だったと思います。

サッシャ インタビュー

今年のアンダーワールドのライブで、日本の音楽史の変化を確認したい

ーーでは、今年のサマソニについてお聞きします。サッシャさんが注目しているアーティストを教えてください。

サッシャ まずは、レディオヘッド。2003年にヘッドライナーで「Creep(クリープ)」というずっと演奏していなかった名曲を演奏したんですが、僕もその時のライブには感動したし、会場全体がすごくハッピーな空間になりました。僕の中でも、最も印象深いライブの1つですね。そんな彼らが、13年ぶりに成熟したサマソニに戻ってきます。2度目のヘッドライナーで、オーディエンスとどんなライブを創るのか、どんな曲を演奏してくれるのか、注目しています。

ーー確かに、今年の話題の中心はレディオヘッドですね。

サッシャ レディオヘッドは、清水さん(クリエイティブマン社長)も大切にしているアーティストだと思うので、見逃せないライブですね。それから、初日のアンダーワールドはラジオDJ的視点で注目しています。これは独断ですが、去年のアクトで一番盛り上がったのはZedd(ゼッド)だったと思うんです。そこに、僕は時代の転換点を感じました。過去にDJがマリンステージに出演したことはありましたが、フェスでDJがチクチクしていることに、日本のオーディエンスはどこかシンパシーを感じていなかった。でも、去年のゼッドのライブを観て、日本にDJ文化が完全に定着したんだなと…。それを受けての、今年のアンダーワールドのライブにオーディエンスがどう反応するのか、すごく注目しています。

ーーこちらも見逃せませんね!

サッシャ 去年のゼッドの盛り上がりは、たまたまのEDM&ゼッド人気なのか、日本の音楽史の変化を表しているのか? アンダーワールドとゼッドは、立ち位置の違うDJなので一概には語れませんが、アンダーワールドのライブでそれが分かるような気がしています。ほかには、同じ初日のファーギーもライブセットとか演出という視点で注目しています。

ーー「演出」というと?

サッシャ アメリカのド派手なハリウッド的ステージが楽しみで(笑)。過去に出演したリアーナもビヨンセも、度肝を抜くようなステージでした。ステージの後ろにセットを置くスペースがあるんですが、だいたい2、3ステージ先の物しか用意されていません。でも、リアーナとビヨンセのセットは、朝からずっと置いてあるんですよ(笑)。

ーーー(笑)!なぜですか?

サッシャ リアーナのセットはエジプトのファラオをイメージしたものだったんですが、ファラオを5分割から6分割ぐらいにして、裏で朝からずっと組み立てていたんです(笑)。「これは何になるのかな?」とずっと不思議でした(笑)。アメリカのアーティストは巨大なプロダクションで動くので、そういう意味でファーギーもハリウッド的な派手なパフォーマンスを魅せてくれるのか、それともシンプルに歌を聴かせてくれるのか、そこを楽しみにしています。

サッシャ インタビュー

体が2つあったら、ビーチステージに居座りたい!

ーーー例えばですが「MCを忘れてサマソニで遊んでいいよ!」と言われたら、どのライブを観たいですか?

サッシャ いっぱいあるなー!! 僕の(ラジオ)番組に来てくれたPentatonix(ペンタトニックス)とか、僕の母国ドイツのエレクトロDJデュオ・Digitalism(デジタリズム)は抜け出させてもらいたい(笑)。あとは、以前に僕の番組に来てくれましたが、THE1975(ザ・ナインティーンセヴンティファイヴ)も急成長していますし…。イギリスで今、一番勢いのあるバンドなんじゃないかな?レディオヘッドと同じ時間だから抜け出せないけど(笑)、観たいなー!!

ーー行きたいライブが満載ですね!

サッシャ …どうしよう(笑)。ビーチステージの「ビルボード ジャパン パーティー」も豪華ですね! これで1つのフェスと言ってもいいラインナップ。照り返しが激しいビーチステージで、ビール片手にSWV…。体が2つあったら居座りたいぐらい(笑)!ビーチステージは、一度行くと戻れなくなると評判なんですよ。

ーーー楽しすぎてハマっちゃう?(笑)

サッシャ そうそう!あり地獄みたいなステージ(笑)。ビーチステージは、そのぐらい魅力的なライブがたくさん観られると思います!

サッシャ インタビュー

「サマーソニック2016」をサマソニ史上ベストなフェスに、世界ナンバーワンのフェスに!

ーーージャンルが違う多数のアーティストが観られるのは、サマソニの魅力ですね!

サッシャ フェスのいいところは、大御所も観られるけど、たまたま通りがかった時に観て「いいかも!」っていうアーティストの発見だと思います。それはフェスに行った人しか経験できないし、“私だけが見つけたアーティスト”的に友達に自慢もできる。そのバンドが成長して何年後かにヘッドライナーで登場するってことも、サマソニは多いですしね!

ーーサマソニをより楽しむコツはありますか?

サッシャ ガチガチにスケジュールを決めて行くよりも、絶対観たいアーティストだけを決めておいて、ほかはユルい時間をつくっておいた方がいいような気がしますね。このアーティストは半分だけ観て、隣のステージになんとなく顔を出す、とか。スケジュールがズレて、目当てのアーティストが観られなかった!ということもよくありますけど、そのおかげで新たなアーティストとの出会いがあって…。そういうことが、夏フェスのいいストーリーになりますからね!

サッシャ インタビュー

ーーーーますます、楽しみになってきました!最後に今年の意気込みとオーディエンスの皆さんにメッセージをお願いします。

サッシャ オーディエンス、サマソニのスタッフ一同、そしてもちろん僕も「サマソニをいいフェスに!みんながハッピーになれるような空間に!」という思いは一緒だと思っています。フェス終了時にみんなでゴミを片付けてくれるような、そんな素晴らしいオーディエンスに恵まれていることは、運営スタッフも僕もすごく感じています。17年間、試行錯誤している部分はありますが、「サマーソニック2016」を、サマソニ史上ベストなフェス、もっと言うと世界ナンバーワンのフェスにしたいと思っています。今年も、みんなで楽しみましょう!

サッシャ
sascha サッシャ
ラジオDJ/タレント。ドイツ共和国連邦・ヘッセン州生まれ。ドイツ人の父、日本人の母の間に生まれ、10歳で日本へ移住。ドイツ語、日本語、英語を自在に操る国際派ナビゲーター。ファンクやロックなど、ジャンルを問わず大の音楽好きで、ライブやコンサートなどの司会から、スポーツの実況まで幅広く活躍中。出演はJ-WAVE「Beat Planet」(月~木 11:30-14:00)ほか多数。
オフィシャルHP http://www.sascha348.com

text:石上直美(verb) photos:俵和彦


サマーソニック2016
2016年8月20日(土)・21日(日)
東京会場:QVCマリンフィールド&幕張メッセ
大阪会場:舞洲サマーソニック大阪特設会場
<関連リンク>
SUMMER SONIC 2016