【主催者インタビュー】SYNCHRONICITY・麻生潤「素晴らしい音楽を持続的に届けるっていうことを大切にしてるんです」
4月8日(土)、渋谷・TSUTAYA O-EASTなど4会場で開催される都市型アートフェスティバル、SYNCHRONICITY。今回で開催12年目となるこのイベントは、その洗練されたラインナップで音楽好きの春の風物詩となっています。
そんなSYNCHRONICITYの主催者である麻生潤さんにこれまでの歴史や今回のラインナップについてお話を伺いました。
スタートはクラブカルチャーとライブカルチャーがミックスしていった時代
ーーー今回で12年目となりますが初めの頃はどんな雰囲気でしたか?
麻生 その頃って日本ってクラブカルチャーの勢いがすごくあって、クラブとライブのカルチャーがミックスし始めている時代だったんです。僕はダンスミュージックもとても好きで、お互いの刺激的なカルチャーをミックスしたい、クロスオーバーさせたいと思って始めたのがSYNCHRONICITYでしたね。
特にブラックミュージックって、みんなで空間を共有しあったり、その場にいるオーディエンスみんなと繋がり合えるような感覚ってすごくあるんです。ロックとはまた違ってて、ちょっとラフでゆるくて、だけど一体感が生まれる感じ。そういうのがすごく好きで、SYNCHRONICITYのこだわりやルーツもありますね。
そういえば、最初の開催はエレグラ(エレクトラグライド)と同じ日で。なんて日に当ててしまったんだー!っていう感じでした(笑)。
ーーーグリーン電力を使う取り組みは第1回からやっていたんですか?この辺りのシステムについて知らない方が多いと思うんです。
麻生 第1回からやっていたんじゃないかな。グリーン電力は、風力、太陽光、バイオマスなどの自然エネルギーにより発電された電力で、「グリーン電力証書」という形で取引する仕組みなんです。僕らはそれを購入するんですけど、その費用が証書発行業者を通じて発電設備の維持・拡大に利用されるんですね。そうすることで、証書に記載された電力量(kWh)相当分の自然エネルギーの普及に貢献して、地球温暖化防止につながる仕組みになるんです。企業はよくCSR的に使っていたりするけれど、僕らはもうちょっとライトに未来に対する気持ちを形にしてるって感じなんです。原発事故が起こったからやってるわけじゃなくて、良くも悪くも力が入ってない、ナチュラルな感じなんですよね。
ーーー確かに、全然グリーン電力押ししてないですもんね。
麻生 昔は記載すらしてなかったくらい。今は時代が時代なので記載するようにはしてますけどね。
辛かったこと、嬉しかったこと
ーーーこれまでで1番しんどかったのはいつでした?
麻生 僕ね、そういうの結構すぐ忘れちゃうんですよ(笑)。でも、そうだなぁ…2011年は5月に開催したんですけどあれはしんどかったかな。
ーーー震災の2ヶ月後くらいですよね。
麻生 イベントって明日明後日のことじゃないんで、今の状況を見ながら先のことを判断していかなきゃいけない。当時5月ってなくなるイベントがほとんどだったんですけど、自分たちは「未来へつなぐ出会いと感動 – CREATION FOR THE FUTURE – 」っていうのをテーマにしているんで、ここで自分たちがイベントの内容をリメイクしてでもやるべきだと思って、覚悟を決めてやるという選択をしたんですよね。
けど、そこからぱたっとチケット動かなくなって。普通だったら1週間で百枚単位で動いたりもするんですけど、突然10枚とか20枚とか!え?こんな感じなんだって(笑)。でも最後の1週間で1000枚以上売れるっていう…。
ーーー1週間でその数はすごいですね!
麻生 1週間前でもチケットが動かなかったから、その状況に合わせて受付も最小限の体制にしたんですね。で、その時っていつもとは違った業者さんに配券を依頼していて、最後の一週間って何枚売れたかわからなかったんです。でもその間に半端なく売れていて、しかも当日券も何百人っていう長蛇の列ができて…。お客さんも当日判断するっていう気持ちだったんでしょうね。受付がパンクして最悪な状況で、僕も外に出て謝りに行ったんです。計画停電の話もあったし、いろんなものが本当に見えなかった。終わったあとは消えて無くなるんじゃないかってくらい疲労しましたね(笑)。あれがやっぱ一番大変だったかも。
ーーーじゃあ、逆にいい思い出ってありますか?
麻生 たくさんあって数えきれないんだけど…。今定番になってる渋さ知らズオーケストラに初めて出演してもらった時は嬉しかったな。2007年の代官山UNITなんで、もうまるまる10年ですね。僕は渋さ知らズオーケストラって日本のソウルミュージックだって思ってるんですよ。ジャズとか、ブルースとか、ロックとか、いろんなジャンルの音楽をごちゃ混ぜにして、それを日本人の感覚で全部ミックスさせて喜怒哀楽も全部ごちゃまぜにして歓喜に昇華する。それってすごく日本的だし、精神的にソウルミュージックにも繋がる部分がある。そのイメージがすごくSYNCHRONICITYにぴったりで、初めて渋さに出てもらえた時は嬉しかったですね。
12年続けるってすごいなぁ。