様々な音楽との出会いが待っている!都市型フェス「SYNCHRONICITY’17」レポート
道玄坂を登り、会場へ向かう道で汗ばむほどの暖かさ。
今年は桜の見頃と重なった4月8日(土)、渋谷・TSUTAYA O-EAST、duo MUSIC EXCHANGE、TSUTAYA O-WEST、TSUTAYA O-nestの4会場で「SYNCHRONICITY’17」が開催された。
様々なジャンルの若手からベテランまで、多くのアーティストが一同に渋谷のライブハウスに集まる贅沢な1日を楽しむべく、開演までタイムテーブルを何度も練り直します。また、ライブハウスで開催されるイベントながら物販からフェス飯、マッサージまで用意されている会場はいつものライブハウスとは違った雰囲気でワクワクさせてくれました。
さらに、O-EASTにはオヤイデ電気がケーブルを提供していると聞き、音質の良さにも期待。様々なコンテンツが用意されているフェスはあっても音質にこだわるフェスとは珍しいのではないでしょうか。
ライブレポート
まずはRIDDIMATESからスタートしようとO-WESTへ向かいます。始まりと同時に繰り出される軽快なサックスのリフ、バンドのグルーヴに一気にフェスに来た!という高揚感を呼び覚ましてくれました。
そんなお祭りな雰囲気に名残惜しさを感じつつ、O-EASTのOGRE YOU ASSHOLEへ移動。『すべて大丈夫』から爽やかにスタートし、『頭の体操』、『なくした』と曲が進むにつれにギターとヴォーカルの織りなすサイケな空間に心地よく飲まれていきます。そして会場の音質の良さは間違いなく、ギターのディレイやカッティングも美しく鳴り、彼らの音を生き生きとさせていました。
そしてduoのtoconomaへと足を運びましたが、すでに入場規制ではないかというほどの人。そこへ彼らの情熱的なパフォーマンスとDOTAMAが登場するというサプライズで、イベントが始まったばかりとは思えないほどに会場は熱気に包まれていました。
O-EASTの2ND STAGEに登場したWONK。昨年のデビューアルバムから一気に注目を集めている彼らですが、音源と比べるとドラム、サックスのソロも観せてくれる熱のあるライブ。「この人誰?めっちゃかっこいいじゃん!」とたまたま居合わせた観客の声が聞こえてきます。こんな偶然の出会いもこのイベントならでは。きっと様々なところでそんな声が上がっていた事でしょう。その印象が積み重なり“ここへ来ればいい音楽に出会える”という信頼を得ていのかもしれないですね。
そのままMAIN STAGEのPolaris。『瞬間』、『深呼吸』とライブの定番曲に続いて「セルフカバーというか…」というMCからフィッシュマンズの『SEASON』を披露。大矢の優しい歌声と柏原のベースラインで蘇る名曲がフィシュマンズを知らない世代にも届く機会があることに嬉しくなってしまいました。
外へ出るとduoの前にはこのあとのYogee New Wavesを観るべく集まった人たちがすでに列を作っていました。
そちらも観たいと思いつつ、O-WESTのBO NINGENへ。ロンドンへ帰る前日であったこの日のライブも全身全霊、長い髪の先までを使って表現する渾身のステージ。最後に高々と掲げられたTaigenのベースには「次いつ日本に戻ってくるかわからない」と言っていたけれど、“またここに集まろう”と言ってくれているように感じました。
その後同じ会場に登場したのはyahyel。映像と音で作られる隙のない世界感はやはり規格外。映像の前でメンバーが自分たちの音楽に体を揺らすシルエットに、いつしか自分の揺れが重なり、不思議な感覚を覚えました。
O-EASTのZAZEN BOYSは開始直前になんとか会場へ滑り込みましたがすでに会場内は人でいっぱい。このイベントに集まる幅広い世代から支持を集める彼らのステージは、この日も笑いと熱狂に包まれていました。
ステージが終わり外へ出てみるともう外は暗くなっていましたが、まだまだこれから!
O-WESTのcro-magnonで心地よく体を揺らします。やはりSYNCHRONICITYにはジャムバンドのフィーリングが合う!観客の熱気で会場内の温度が上がっているんじゃないかと感じるほどでした。しかし、ライブではその暑さがまた高揚感を生むのです。
O-EASTのMANNISH BOYS(斉藤和義 / 中村達也)は大きな歓声に迎えられて登場し、『Dark is easy』からスタート。キラキラと光るきれいなスーツに身を包み演奏する2人の姿がなんとも男臭くてセクシー。心躍るロックな楽曲たちを生き生きと演奏してくれました。
そしてこの日なかなか入ることのできなかったO-nestへ。他の会場に比べて小さな会場ですが“ライブハウスに来た”という気持ちさせてくれます。
O-nestは隙のないタイムテーブルになっているのですが、その秘密はステージと別に用意されたDJブース。2つが交互に展開してくようですが今回はちょっと違いました。NewAction!の星原のDJからそのままDJブース前のフロアにchelmicoが登場。
これまでの“ラップをする女の子”の概念を崩すような巧みなフロウと観客との距離が一体感を生み、小さな会場は際限なく盛り上がっていきます。本当は早めに切り上げてO-EASTのCHAIを観に行こうと思っていたのですが完全にロックされてしまいました。
そしてO-WESTのJojo Mayer & NERVEへ。ジョジョのテクニカルなドラムさばきに様々なサンプリング音やシンセのフレーズが重なり、ミニマルな展開からカオティックな音の世界へと移り変わる様はこれまで経験したことのない新しい刺激を感じました。
そして、これを見ずには終われない。O-EASTのトリを飾る渋さ知らズオーケストラ。なんとこの日は向井秀徳(ZAZEN BOYS)と中村達也(MANNISH BOYS)が参加し、いつにも増して盛大な“お祭り”となりました。
ステージ上で思い思いに自分を表現する演奏者とダンサー。それにつられて観客も自分を開放し、ステージの上も下もない一つの空間となっていきます。この瞬間は何度観ても飽きることがありません。最後に不破が「(向井と中村が)そこにいるだけで一緒に演奏してくれた」と語っていましたが、そんな風に音楽を愛する者たちが集まり、それを楽しむという単純な、きっと誰もが笑顔になれる、最高の時間でした。
1日で個性ある様々なジャンルのアーティストのライブを楽しみましたが、それでもまだ“あのアーティストも観たかった”、“あのステージをもう少し観たかった”なんて思いが残ります。きっとそんな思いが単独のライブや他のイベントへと足を運ぶきっかを生み出してくれるのでしょう。そんな、この日をきっかけに起こる行動が来年の音楽シーンを変えているかもしれません。
text:くのまい
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