【ソニックマニア復活】シームレスなダンス・ミュージックの祭典(前編)
ダンス・ミュージックと一口に言っても、そこには多くのジャンルが存在している。ときにはロックだってダンス・ミュージックの括りに入るだろう。マッドチェスター系のアーティストが良い例だ。ザ・ストーン・ローゼスやニュー・オーダーなどがそれにあたる。時代によってもその音像は様々で、今日までに幾度も新陳代謝を繰り返してきた。
ソニックマニアは、そんな古今東西のダンス・ミュージックを包括的に提示してみせる。過去には初音ミクまで出演しているのだから恐れ入る。シームレスに様々なカルチャーが結びつくのも、このフェスの特徴だろう。
硬派なラインナップのSONICMANIA
今年はどうだろう?相変わらず多方面に訴求するラインナップだが、今回は例年に増して硬派であるように思う。ほんのりエレクトラグライドの香りを感じるのは筆者だけだろうか。本稿では、6月20日現在までに発表されているアーティストを前後編に分けてピックアップしたい。やや長めだけれど、予習の一助にはなると思うので、ぜひお付き合い下さい。
新譜も好調!Kasabianのダンサブルなロックサウンド
まずは今回のヘッドライナー、UKロックバンドのカサビアンから。今年の5月にリリースされた6枚目のアルバム『For Crying Out Loud』、セールスも好調だが、内容も大変充実している。今作では原点であるギター・ロックに回帰したというが、それであると同時に彼ら史上最高に「踊れる」一枚となっている。80’sディスコライクな『Are You Looking for Action?』、まるでラモーンズのようなパンクサウンドが耳を引く『Bless This Acid House』。サマーチューンの新たな金字塔になりそうな『Wasted』も素晴らしい。
Kasabian – 『Are You Looking for Action?』
小難しさがなく、至ってシンプル。その点では、今もなお名盤として君臨し続けるファースト・アルバム『Kasabian』にも通じるところがあるように思う。なるほど、やはり「原点回帰」と言うにふさわしいかもしれない。今回のソニックマニア(サマーソニックにも出演)でも、新旧織り交ぜたライブパフォーマンスを僕たちに見せてくれるだろう。過去と現在がしっかりリンクした今のカサビアンこそ、刮目すべきである。
Kasabian – 『Club Foot (Live At Brixton Academy)』
高らかにカムバックを宣言したLiam Gallagher
オアシスの音楽を聴いて育った身として、同バンド解散以降のリアム・ギャラガーの姿には目を覆いたくなるものがあった。兄であるノエル・ギャラガーとの壮大な兄弟喧嘩の後、新バンドの『ビーディ・アイ』を結成するも鳴かず飛ばず。2014年3月には横浜アリーナで来日公演が開催されたが、集客に苦労しているのは明らかだった。しかもその直後に、リアムは当時の妻ニコル・アップルトンと正式に離婚。さらに同じ年の10月、ついにビーディ・アイは解散してしまう。このバンドの活動歴はわずか5年であった。一方で兄のノエルは良作を連発するものだから、ますますリアムの立つ瀬がない。そんな背水の陣でリリースしたのがコレである。
Liam Gallagher – 『Wall Of Glass』
これ以上完璧な復活劇があるだろうか。ブルース・ハープという意外性に、紛れもなくオアシスで鳴っていたギターのリフ。リンク先の動画にも称賛の声が溢れているが、みんなコレを待っていたんだ。このたび、リアムはソニックマニアに続いてサマーソニックにも出演するが、彼の登場は決してノスタルジーなどではない。この2017年、正真正銘のロックスターが帰ってきたのだ。
Liam Gallagher and Coldplay – 『Live Forever (One Love Manchester)』