【ソニックマニア復活】シームレスなダンス・ミュージックの祭典(前編)
異次元からやってきた超絶技巧バンド、Shobaleader One
Warp Recordsの鬼才、Squarepusher率いる超絶技巧バンド。今年の4月12日、渋谷のTsutaya O-eastに出向いた人の多くが、ショバリーダー・ワンへの称賛を口にしていた。彼らの初来日ライブのことである。バンドのメンバーはSquarepusher(Ba)、Arg Nution(Gt)、Strobe Nazard(Key)、Company Laser(Dr)の4人だ。コンセプトもなかなかエッジが効いていて、Squarepusher以外の三人は地球外生命体だという。
Shobaleader One – Boiler Room In Stereo
確かに、コレを観る限りでは彼らの「宇宙人説」はあながち嘘でもなさそうだ。技術力の高さに思わず笑ってしまう。彼らが演奏するのは、Squarepusherが過去に作った楽曲だ。彼の曲を聴いたことがある人は、これがどれほどの離れ業なのかを理解できると思う。変則的で細かいビート、重く太いベースライン、絶え間なくループするシンセサイザー…。これらを人力で再現しようなんて、狂気の沙汰である。しかも、彼らはSquarepusherのテクニカルな面だけでなく、メランコリックな一面までも再現してみせるのだ。
Shobaleader One – Iambic 5 Poetry
狂宴は真夜中に。!!! (チック・チック・チック)製のディスコ・パンクを聴け!
人も音楽も多様な街、ニューヨーク。かの地が生んだディスコ・パンク・バンドが、チック・チック・チックである。彼らの音楽もまた、ニューヨークよろしく多様性に富んでおり、「踊れるパンク」という中枢部以外は、その時々によって変化する。その意味では、彼らは極めてソニックマニア的だ。最新作の『Shake the Shudder』も、昨今のインディーR&Bの影響を色濃く受けている。
!!! (Chk Chk Chk) – Dancing Is The Best Revenge
「お、今回はブラッド・オレンジっぽい感じで来るのかな?」と思わせておいて、ハードなディスコナンバー。本作はメインヴォーカルを務めるニック・オファーのほか、多くの女性ヴォーカリストが参加しており、彼らのダンス・ミュージックを更にきらびやかにしている。80’s特有の浮遊感やきらめきが現れているのは、彼女たちによるところが大きいだろう。それから、バブリーな有頂天に終始しないのもチック・チック・チックの肝要なところだ。臆することなく、彼らは政治的主張を音楽に落とし込む。本作で言えば『Five Companies』などがそれに当たるが、残念ながらネット上に音源がないので、曲名を紹介するにとどめておく。
!!! (Chk Chk Chk) – 『The One 2』
加速度的に階段を駆け上がる3ピースバンド、D.A.N.
日本のポップ・ミュージックのフロンティアを切り開こうとしているバンド、D.A.N.。この世代のアーティストは、とにかく垣根がない。ジャンルにおいても言語においても、あるいは編成においても。今日までに凝り固まったバンドのフォーマットを、意識的に見直そうとしているようだ。D.A.N.は、その中でもさらに突出した存在感を放つ。2016年にリリースされた1sアルバムの『D.A.N.』 以降、各所でブレイクスルーを起こしまくっている。
D.A.N. – 『Shadows』
多くの日本人アーティストが海外の音楽的エッセンスを取り入れようとするとき、揃って苦労するのが「言葉」である。もちろん、それは単純な語学力のことではない。例えば、英語圏で流行っているようなインディーR&Bに日本語を載せようとしても、「載らない」のだ。言葉の構造がまるで違う。だから、日本語で普遍的に良い音楽を目指そうとすると、どうしても限界が見えてくる。そこをスマートに超えて行ったのがD.A.N.だ。ビッグネームだらけのソニックマニアだが、彼らにはむしろ海外勢を驚かせてほしい。やれるはずだ。
D.A.N. – 『Dive (Live)』
(後編へ続く)