【ソニックマニア復活】シームレスなダンス・ミュージックの祭典(後編)
さて、ソニックマニア特集の後編だ(前編はコチラ)。
前編はバンド編成のアーティストをメインにピックアップしたが、後編では、それ以外の形式で活動しているアーティストにフォーカスする。以前と比べて、今のダンス・ミュージックは明らかに形式そのものが多様であるが、その意味でも「シームレス(垣根のない)」という言葉を当てることができそうだ。これからご紹介するのも、その最先端にいるアーティストである。
ノイジーでキッチュ。フレンチ・エレクトロの旗手、Justice
ゼロ年代後半、まだ「EDM」という呼称が浸透していなかった時代。つまり、今ほどダンス・ミュージックに光が当たっていなかった頃のこと。フランスのパリを拠点とするレーベル、Ed Banger Recordsは一時代を築いた。当時タフな女の子たちは、こぞってアフィの『Pop The Glock』を聴いていたし、ヒップなDJの間ではペドロ・ウィンター(本レーベルの主宰でありプロデューサー)が崇拝されていた。そしてその中心にいたのが、紛れもなくJusticeの二人である。
Justice – D.A.N.C.E.
今振り返ると、彼らは時代を先取りしていたように思う。この曲が収録されている彼らのファーストアルバム『†(クロス)』は、「ディスコ・オペラ」というコンセプトが銘打たれていたが、このように当時から異なるジャンルを結びつけることに躊躇がなかった。最新アルバムの『Woman』にも無論それは言える。デビュー以来どんどんスケールが大きくなるが、やはり横断的にディスコ・サウンドをとらえるスタンスに変化はない。オープニングを飾る『Safe And Sound』は硬派なファンクテイストだし、本作屈指の名曲『Randy』は今までのJusticeに壮大なオーケストレーションを掛け合わせたような内容だ。ライブではさらに違う表情を見せるので、ぜひ会場で目撃されたし。
Justice – 『Safe And Sound』
ポップ・ミュージックの探求者としてのPerfume
全盛期を更新し続けるPerfumeの三人。ブレイクして以降、ずっとそのまま第一線で活躍している。音楽においても、あるいはライブの演出においても、彼女たちは常に革新性の高いパフォーマンスを提示してきた。有名なSXSWにおける『Story』はもう2年も前だが、今見ても先駆的である。日本ではなぜかアーティストがメインストリームに出ると物凄い勢いで消費されてしまうのだが、彼女たちには無縁な話かもしれない。
Perfume – 『TOKYO GIRL』
音楽の面でも本当にずっと模索を続けている。ゴリゴリのEDM、正統派J-POP、さらにはミニマル・ハードテクノ。Perfumeのサウンドは実に多面的だ。しかもいつ聴いても「今」を感じる。プロデューサーの中田ヤスタカは、彼女たちを通してその時代の空気を切り取ってみせるのだ。『Baby Face』ではド直球のトロピカル・ハウスに挑戦し、最近公開された『Everyday』では更にそこからの発展が見られる。あらゆる意味で挑戦者だ。そんな彼女たちの姿勢を体現したような曲があるので、ここにご紹介しよう。
Perfume – 『STAR TRAIN』
元祖UKテクノ・ユニットOrbital、再始動!
イギリスはケント出身の大御所テクノ・ユニット、Orbital。2014年に二度目の解散の後しばらく間を空け、今年の2月に新曲の『Kinetic』の発表と共に再始動をアナウンスした。30年近いキャリアを持つ彼らの復活は、往年のテクノファンのみならず、多くのクラバーを歓喜させた。アシッド・ハウスやブレイク・ビーツ、ドラムンベースなど、今のクラブ・ミュージックの礎を築いたアーティストである。個人的にも彼らの再始動にはぐっと来た。
Orbital – 『Kinetic』
代表曲は『Chime』と見て間違いない。恐らく今回のソニックマニアでも披露されるだろう。けれども、彼らの他の作品にもぜひ耳を傾けて欲しい。同世代のケミカル・ブラザーズのような派手さはないけれど、彼らの持ち味は素朴でダークなサウンドだ。この暗さがまたUKっぽい。しかも、それ一辺倒にならず、時流に合わせてグライムを取り入れてみたり、アンビエントへの接近を試みている。現在新作アルバムを制作中とのことで、そちらも楽しみに待ちたい。
Orbital – 『Wonky』