ホームグラウンドで観るライブは格別!経験者が語る海外フェスの魅力とは?

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サマソニ、フジロック、TAICOCLUBなど、大型の音楽フェスに参加すれば、日本にいながらにして、海外の音楽シーンの最前線で活躍する人たちを一同に観ることができます。しかし無類の音楽好きは国内の音楽フェスでは飽き足らず、海外のフェスにも参加しているもの。そこで、今回は海外フェスへの参加歴も長い、音楽ライターの上野功平さんに、現地のフェスの特徴・思い出、初心者にオススメの海外フェスなどについて、伺いました!

相手のホームグラウンドでしか体験できない会場との一体感

――最初に海外のフェスに行かれたのはいつでしょうか?

2010年にニューヨークの田舎で開催されたAll Tomorrow’s Parties(以下、ATP)が最初ですね。イギリス発祥のフェスなのですが、毎年1人の著名人がキュレーターとなってライブ出演者をブッキングするのが特徴で、この年のアメリカは映画監督のジム・ジャームッシュが担当したんです。メインがSonic Youthで、メンバーのリー・ラナルドやスティーヴ・シェリーなどのサイドプロジェクトも観ることができるのがいいなぁと思いました。他にもずっと日本に来ていなかったShellacを観ることができましたし、Portisheadのジェフ・バーロウのサイドプロジェクト「Beak>」を観ることができたのは嬉しかったですね。そこから海外フェスの魅力にはまってほぼ毎年、何かしらに行っていますね。

右端に映る長身の男性はキュレーターのジム・ジャームッシュ監督
右端に映る長身の男性はキュレーターのジム・ジャームッシュ監督

――そこまで海外フェスに魅せられたのはなぜでしょうか? 初めての参加を決意するにあたり、躊躇はなかったのでしょうか?

小さい頃から親に連れられて海外にはよく行っていたので、海外のフェス参加ということに敷居の高さを感じることはありませんでした。それよりむしろ好きなミュージシャンのホームグラウンドでライブを観られるという魅力のほうが大きかったです。2010年のATP NYの場合、Sonic Youthがまさにホームグラウンドですよね。地元のファンの人がライブを見届けてくれる状況というのは、ミュージシャンにとってもリラックスしてやれますし、盛り上がりも日本とは違うんですよ。単純に同じ英語圏で一緒に歌える人が多いということはもちろんですが、それだけでない熱量の部分でも全然違います。

海外フェスに魅せられたもう1つの理由は、日本には来ないアーティストを観られるというのも大きいです。特にサイドプロジェクトなどの場合、なかなか来日のチャンスがないですから、それを観られるというのは大きな魅力だと思います。

2年前に亡くなってしまったTモデル・フォード氏。ゲリラ的に出演者が演奏することもあります
2年前に亡くなってしまったTモデル・フォード氏。ゲリラ的に出演者が演奏することもあります

アーティストとの距離が近いのも海外フェスならでは

――海外フェスに参加した際の印象的なエピソードがあれば、教えて下さい。

ATP NYで2003年のサマソニに出ていたThe Greenhornesのパトリック・キーラー((ドラマー。The Raconteursのメンバーとしても有名)が物販エリアにいたので、話しかけてみました。そうしたら当時の来日ライブのことを覚えていて「サマソニ、マジで熱かったよな」みたいなことをノリノリで話してくれて、関西弁とか日本語を覚えていたみたいで、気を良くしたのか物販のTシャツをタダでくれました(笑)。

ATP FesでThe Greenhornesのメンバーにもらったサイン。サマソニ来日のことを覚えているらしく、「DOMO(どーも)」と日本語も
ATP FesでThe Greenhornesのメンバーにもらったサイン。サマソニ来日のことを覚えているらしく、「DOMO(どーも)」と日本語も
今年のPrimavera Soundの後夜祭でジョン・レノンの息子でTHE GOASTTのショーン・レノンと2ショット
今年のPrimavera Soundの後夜祭でジョン・レノンの息子でTHE GOASTTのショーン・レノンと2ショット

――海外フェス未経験者が参加するための心構えや気をつけたほうがいいことを教えてもらえますか?

そうですね。1つはチケットの買い方含めて、すべて英語でのやりとりになるので、そこにハードルの高さを感じる人が1人で行くのは厳しいかもしれませんね。あと日本のフェスに比べて、運営が行き届いていないことも多いので、きちんと自分でいろいろな判断ができることが大切ですね。例えば、出演者やステージが変更になってもHPとかで告知されないこととかありましたからね。ただ、行ってみないと何が起こるかわからないこのドキドキ感は、海外フェスならではのものなので、そうしたハプニングを楽しめる人にとっては、海外フェスはとても刺激的なものになると思います。

「行ってみたいけど、安全面などが心配。語学力に自信がない」という人もいるかもしれませんが、いざ行くと決めてしまえば意外となんとかなるものです。僕は危険な目にあったことやトラブルは今のところ1度もありません。また、1人での海外フェス参加にハードルを感じている人は、同じフェスに参加する日本人をTwitterなどのSNSで探せば意外とたくさんいますから、そういう人たちと行動を共にすれば、ある程度安心だと思いますよ。

――フェス初心者でも参加しやすい海外フェスがあれば、教えてください。

毎年1月〜2月に開催される、St Jerome’s Laneway Festival(※)なんかいいのではないでしょうか。このフェスはシンガポールを皮切りに、オーストラリア、ニュージーランドの各都市を巡回していく1日限定のフェスでもあります。


※ CBCが2月に発表した「すべての音楽ファンが訪れるべき音楽フェスティバル TOP12amassより引用)」でも第8位にランクイン。

僕は今年の1月に開催されたシンガポール版に行ったのですが、今年のフジロックでホワイトステージのトリを飾っていたRoyal BloodやFKAツイッグス、同じく1月に来日公演を行ったマック・デマルコが出るなどラインナップも良かったですし、日本とは真逆の気候だから半袖・半パンで過ごせて快適でした。会場もマリーナベイ・サンズのふもとだからアクセスも便利ですし、何より日本から近いですからね。会社員の人なら金曜日だけ有給を取って深夜便・早朝便をうまく使えば、3日間でフェスも観光も充分楽しめると思います。ホテルの予算にもよりますが、往復の航空チケット込みでも10万円前後で事足りるので、冬のボーナスを使って行くのも良いのでは。

Laneway Festival Singapore 2015
シンガポールで開催された今年のSt Jerome’s Laneway Festivalのハイライト動画

会場の後方に見えるのが、シンガポール随一のスケールを誇るホテル「マリーナベイ・サンズ」
会場の後方に見えるのが、シンガポール随一のスケールを誇るホテル「マリーナベイ・サンズ」

――なるほど、それは参考になりますね。では、日本のフェスと海外フェスでは、どのようなところに違いを感じますか?

日本のフェスはやっぱりキレイで安全ですよね。会場もかなり過ごしやすい環境が整っていると思います。出演するアーティストについて言えば、サマソニはロック、ポップス、ヒップホップ、メタル、さらに邦楽バンドやアイドルなど良い意味で「カオス」なラインナップが良いですよね。過去にもArctic Monkeysやビヨンセが話題になりましたが、海外フェスと比べてもほとんど温度差なく、旬なヘッドライナーを持ってくるのは素晴らしいと思います。



今年は、ここ最近のアメリカン・ポップスの“顔”と言っても過言ではない、ファレル・ウィリアムスをスタジアムで観られるのが最高ですよね。海外アーティストが来日するイベントが盛り上がれば、来日公演の機会を増やすことにつながると思いますから、日本でもしっかり応援していきたいと思っています。


まずは日本で目一杯夏フェスを楽しむ。それでも飽きたりない人は、上野さんの言葉を参考に海外フェスを検討してみてはいかがでしょうか?

text:冨手公嘉  写真提供:上野功平

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Profile:上野巧平
なぜか美容師免許を持っているWebディレクター&ライター。グランジとヒップホップと女性SSWと麻婆豆腐が大好物。来年は Austin Psych FestとFYF Festに行ってみたいそう。海外フェス参加歴:6回/主な参加海外フェス:Coachella、ATP Festival、Primavera Sound など