音楽と、ファッションと、サマーソニック論

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Space Oddステージの可能性。そこで輝いたMaika Loubté

今年から新設されたSpace Oddステージ。その名の通り、渋谷にあるニューカルチャーの発信地『Space Odd(Sankeys)』によって展開された。このステージを彩ったのは、向井太一やZOMBIE-CHANG、Nao Kawamuraなど、次代を担う新たな才能である。まだ見ぬ大器を見つける場所がどんどん失われて行く今、心の底から来年も続いて欲しいと思ったステージだ。

そんなSpace Oddステージでキラ星の如く輝いていたのが、宅録系シンガー・ソングライターのマイカ・ルブテである。日仏ハーフの彼女は、幼少の頃から世界を飛び回っていたという。その影響なのか、バッグラウンドに浮かび上がる音楽が実に多様。

Maika Loubté – 『You and I』

いや、「多様」という言葉は適当でないかもしれない。正確には「分からない」と言うべきか。明らかに音楽の素養は高いのだけれど、核の部分にモヤがかかっていて、こちらからは全景が見えない。4つ打ちではあるがハウス一辺倒ではないし、テクノまみれというわけでもない。どちらも音楽体験として通過しているのは分かるが、どちらのジャンルで括ることもできない。強いて言えば、初めてUnderworldを聴いたときの衝撃に似ている。

「なんだかよく分からない音楽」とメディアの人間として言うのは憚られるが、そういうサウンドに出会える瞬間というのは、やはり幸せなひと時である。そういう時間をくれたSpace Oddステージも、やはり尊い存在だ。もう一度言うけれど、どうか来年も続いて欲しい。

ゴーイング・マイウェイな精神をどこまで持ち続けられるかが、子供と大人の境界線だと思う。ナイロンガールズはお手本のようなパンクキッズだ。ZINEも作り続けて欲しいし、ジミヘンのTシャツも着て欲しい。マイカ・ルブテが許容した自由は、つまりそういうことだ(多分)。

HOSTESS CLUB ALL-NIGHTERに見る夢。またいつかBEAK>に会いたい。


今年3回目を迎えるHOSTESS CLUB ALL-NIGHTER。サマソニ1日目の深夜に開催されるオールナイトのイベントである。一番有名どころがモグワイという、尖ったラインナップが魅力的だ。この時間帯は、「英語の教科書の代わりにアメリカの音楽批評サイト『ピッチフォーク』を読んで育ちました」と言わんばかりのギークなオーディエンスで溢れかえる。

いや、「溢れかえる」というのは語弊がある。正確には「溢れかえらざるをえない」のだ。恐らく、今このイベントに集まる人たちは自分がマイノリティであることを自覚しているはずである。これぐらいの規模のイベントでようやく、同志の存在に気づくのだ。

BEAK – 『The Broken Window』

BEAKの来日を楽しみにしていたのが自分だけではないと知り、束の間の帰属感に浸る。ジェフ・バーロウ(ポーティスヘッド)初来日に沸くコミュニティは、今の日本にどれほど存在するのだろう。ジョイ・ディヴィジョンを思い出しながら、BEAKのステージの前で立ち尽くす。確かにインディーはもう息絶えたのかもしれないが、それでも僕らはまたいつかBEAKに会いたい。

ここまでシュッとしているかは分からないけれど、概ね僕らはこんな感じでしょう。TSUTAYAやタワレコに2時間ぐらい居られるし、一人でどこへだって行ける。

ただ一つ誤解して欲しくないのは、この手の人種が必ずしも孤独を愛しているわけではないということ。何せ、不器用。心の奥底では誰かと話したくてしょうがないはずだ。身の回りで見かけた際には、ぜひ助けてやって欲しい。

日本の音楽シーンの「今」を残しておきたくて。

今年ほどサマソニとフジロックのカラーの違いが明確になった年はない。外向的であったフジロックに対し、サマソニは洋楽の状況も含めた国内の「今」を映し出していたのである。

で、僕らはその様子をある種記号化して語る必要性を感じていた。アーティストもオーディエンスも、それぞれ違うはずなのに、それがどんどん見えにくくなっているような気がしていたから。てんこ盛りな内容の本稿だが、まさにこの「てんこ盛りっぷり」こそが、今年のサマソニの有様である。混迷極まる日本の音楽シーンが、ここには確かに存在した。

text:川崎ゆうき

■イラストレーター プロフィール

ery

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イラストレーター / デザイナー。1994年生まれ、東京在住。イラストやコラージュ、グラフィックデザインを中心に、ZINE、グッズ、展示と活動の幅を広げ中。主にinstagramでイラストなどを公開。好きなものはローラースケート。


SUMMER SONIC 2017
2017年8月19日(土)・20日(日)
東京会場:ZOZOマリンスタジアム&幕張メッセ
大阪会場:舞洲SONIC PARK(舞洲スポーツアイランド)

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