WORLD HAPPINESS 2015レポート ~磐石のクラムボンとMETAFIVEの衝撃~

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雰囲気や居心地の良さでは群を抜く音楽フェスティバルである。会場は東京・夢の島公園陸上競技場。2008年から続いているが、8月の前半に開催される例年と違い、今年は月の後半に実行された。昨年の豪雨を受けてのことだが、まさか今年も台風に狙われることになるとは誰が予想出来ただろう。カジヒデキの「雨降り都市」を聴きながら、天候のコンディションが良くなくても楽しめるよう心の準備はしていた。が、さすがに昨年のような荒天は御免被りたい。祈るような気持ちで当日を迎えたが、そんな心配は杞憂に終わった。厳密には何度か雲行きが怪しくなったものの、最後まで雨の襲撃を受けることなく楽しめた。

WORLD HAPPINESS 2015

参加するお客さんも「分かっている大人」が多く、そのあたりも雰囲気の良さに直結しているようだ。不必要に騒いだり、マナーが極端に悪い人間はほとんどいない。そこへキッズクラブも完備していると来れば、どれだけアットホームな空間であるかが想像出来よう。会場が一体となって、至高のホスピタリティを作り出している。

WORLD HAPPINESS 2015

今回のラインナップは、未だかつてないぐらい遊び心に富んでいた。Charisma.comがネット世代のフラストレーションを吐き出したかと思えば、坂本真綾が清楚な魅力溢れるパフォーマンスを展開する。そして少々浮いた存在の筋肉少女帯が、完膚なきまでに会場を荒らして(最大級の賛辞を送っているつもり)去って行った。ファンとしてはLOVE PSYCHEDELICOの帰還も嬉しい。彼女たちのライブでは、全国ツアーと同じく、高橋幸宏がドラムを叩くという粋な演出もあった。

今回は、そんな実力派揃いのアーティストの中でも、際立って素晴らしいステージを繰り広げていた二組をピックアップしたい。何を今更、という声が聞こえてきそうな二組だが、これを語らずにはいられないのだ。それほどに圧巻のパフォーマンスだった。各々のワンマンライブにも、必ずや馳せ参ずると固く心に誓った次第である。

クラムボン

まずは当日のセットリストを確認してもらいたい。

M01. シカゴ
M02. サラウンド
M03. 以心電信(YMO カバー)
M04. GOLDWRAP (e.s.t. カバー)
M05. KANADE Dance
M06. 波よせて
M07. yet

やはり注目すべきは真ん中の「以心電信」と「GOLDWRAP」である。完全にワールド・ハピネス仕様だ。このレア感に歓喜したファンも多かろう。ライジング・サンのクラムボンのセットリストを見て、現地にいる人を心の底から恨めしく思ったものだが、そんな嫉妬の炎が跡形もなく鎮火した。

この日はオリジナルメンバーのみの編成である。それがこのパートでは大変効いていた。これまで多くのアーティストと共演してきたクラムボンだが、それは自身の技術が図抜けて高いからこそ出来る芸当である。至極当然のことだが、改めてそれを痛感するパフォーマンスだった。たった3人でこの迫力。漏れなく全員が超絶テクニックを披露していたが、特にベースのミトは異次元である。6本の弦をあれだけ使いこなせれば、当のベースも本望だろう。屋外の大規模な会場で、どちらかと言えば室内仕様のセットリストを組んでくるあたりにも、バンドとしての矜持が感じられる。

技巧で硬派な展開に終始することはなく、「yet」をラストに持ってくるのもしたたかだ。懐が深く、どこまでもフレキシブル。それに加えてこの包容力である。少し肌寒かったが、それとは対照的に暖かい心地がした。

yet / clammbon(クラムボン)
(single ver.)

クラムボン オフィシャル・ページ


METAFIVE

高橋幸宏、小山田圭吾、砂原良徳、TOWA TEI、ゴンドウトモヒコ、LEO今井。この6人が揃おうものなら、もはや国内には敵うアーティストはいないだろう。まさにアベンジャーズさながらのドリーム・チームだ。この名前の羅列を眺めているだけでも壮観だが、生のライブは更に圧倒的である。

それぞれが担当する楽器は一つではない。ある曲ではギターで渋いリフを聴かせたかと思えば、次の曲ではキーボードで流麗な旋律を叩き出す、なんてことがザラだ。彼らのような音楽のスペシャリストが、そのようなゲリラ的演奏をするのならば、そのサウンドスケープは無限の広がりを見せる。どの音がどこから飛んでくるのか、よほど意識を集中させていないと判別できないのである。オープニングの「School Of Thought」から、雄大ながらも緻密な世界観を提示した。

そして、唐突に発表されるオリジナルアルバムのリリースと、ワンマンライブの開催決定。今か今かと待ちわびていたファンは狂喜乱舞である。新曲の「Don’t Move」や「Maisie’s Avenue」も初披露され、オーディエンスの興奮はいよいよ最高潮に達する。ゲストの水原佑果がステージに登場する前には機材トラブルもあったが、そんな些細なことが全く気にならないパフォーマンスだった。無事に「LUV PANDEMIC」も聴けたわけで、大満足である。この音楽が聴けるのならいくらでも待ちましょう。

あっという間の1時間である。アンコールの「Cue」に至るまで、気の抜ける瞬間が全くなく、終幕後には気持ちのよい疲労感に包まれていた。

LUV PANDEMIC TOWA TEI

高橋幸宏 オフィシャル・ブログ

「WORLD HAPPINESS 2015」

2015年8月23日(日)
OPEN 11:00 / START 12:30
会場:夢の島公園陸上競技場

<出演アーティスト>
POLYSICSNEW / Charisma.com NEW / 土屋昌巳[KA.F.KA] / clammbon / LOVE PSYCHEDELICO / METAFIVE(高橋幸宏 × 小山田圭吾 × 砂原良徳 × TOWA TEI × ゴンドウトモヒコ × LEO今井) / TRICERATOPS / Controversial Spark / 野宮真貴 with カジヒデキ / 筋肉少女帯 / スチャダラパー / 坂本真綾 / SCANDAL

<関連リンク>
WORLD HAPPINESS 2015