確かな成長を見せたアウスゲイル来日公演ライブレポート
11月10日(金) 東京・新木場スタジオコースト
今年は雨の続いたフジロックで幸運にも月明かりの元、大自然に囲まれたホワイトステージに出演したアウスゲイル。爽やかな空気の中で聴く彼の歌声は自然と一体化し神々しささえ覚えたものだ。そんな自然の中こそが彼の魅力を活かせるステージだという印象だったが、まったくもってそれは間違っていた。
今回の来日公演は今年リリースした2ndアルバム『アフターグロウ』が彼の表現の幅をより広げたことを証明するかのようなステージだった。これまで抱いていたのは“爽やかで雄大なアイスランドの自然”というイメージだったが、この日感じたのは“内に秘める人間の感情”のようなもの。
「Hold」から静かに始まり、前作の曲も織り交ぜながら「Here Comes the Wave in」、「Underneath It」の流れでは少しダークさも見せ、「New Day」のようなアコースティックギターの音色が爽やかな曲もあり、と2ndアルバムからの楽曲が加わることで実に表情豊かになった。
持ち込んだ照明の演出の効果も大きかった。ステージに点在した棒状の照明には淡く滲んだような明かりが灯り上から下へ、下から上へと不規則に動きを見せる。そして時には赤く激しい色に、時には眩しいほどの白に、と心の動きを映しているようだった。滲むようにすっと身体に染み込む彼の歌声ともマッチしている。
セットリストの内容だけ見れば前回見たフジロックと変わりはないように見えるのだが、ここまで真逆の内へ内へと響くような人間味を感じることができるたのは予想外だった。同じように屋内で観た昨年のホステス・クラブ・オースナイターの時には感じなかったものだ。2ndアルバムではよりエレクトリックなサウンドが増えた印象はあったけれど、フジロックで観たライブとここまで違うとは。
それは最近までエレクトロニックなサウンドや機材に触れてこなかった彼が徐々にそれらに馴染んできている証拠だ。前作から今作、そしてその後もなお、彼は変化し続けている。そして、これはボン・イヴェールらのヴォーカルエフェクトの影響で昨年から注目を集める話題であるが、エレクトロニックなサウンドで感情がより表現されるということが彼にも当てはまるだろう。
これからさらに自由に音を作り出せるようになったならどんな世界を見せてくれるのか、まだ25歳の彼の成長が楽しみで仕方ない。
【セットリスト】
Hold
Fennir Yfir
Higher
Here Comes the Wave in
Underneath It
New Day
Head in the Snow
Dreaming
In Harmony
Afterglow
I Know You Know
King and Cross
Unbound
Going Home
(Encore)
Stardust
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