【来日記念】今こそ聴くべきジャネット・ジャクソンのヒット・ナンバー5選
ジャネット・ジャクソンの来日公演を機会に、改めて彼女の歴代ヒット・ナンバーに注目したい。が、自分で5曲と決めておきながら全く的を絞れないという体たらく。えらく時間がかかってしまった。それもこれも、ジャネットが名曲ばかりを世に送り出すからである。最初に断っておくと、この記事に対して「あの曲がない、この曲がない」とのご感想を持たれる方が、中にはおられるかもしれない。誰よりも筆者自身がそう痛感している。しかし、今回は「今聴くべき」というところに力点を置いた。ジャネットの音楽的な変化が確認できる、あるいは後続アーティストたちへの影響が強い(それこそ彼女のほぼ全ての曲が当てはまるが)という基準の5曲である。なおかつ、現在ワールド・ツアーで組んでいるセットリストも参考にした。僭越ながらも、誠心誠意で選んだつもりである。
どうぞ、最後までお付き合い下さい。
Nasty
まずはこちらの曲から。ジャネットのキャリアの中で最も重要なアルバム、「Control」に収録されているナンバーだ。セールス上の数字の他、あらゆる面で彼女の地位を確立したのは、このアルバムである。この一枚が出るまでは、彼女はジャクソン家のお嬢さんに過ぎなかった。「ジャネット・ジャクソン」という1人のアーティストとしてではなく、どこかファミリー・ネームが先行しているところがあったのだ。その状況を打破し、彼女の華麗なる変身の一助となった歴史的な名盤である。特にこの「Nasty」の歌詞はかなり直截的だ。未だに湯川れいこさんの名訳を超える文章を他に知らないので、ここに引用する。
「わたしは“ベイビー”なんかじゃないわ。わたしの名前はジャネット、もしくはミス・ジャクソンと呼んでちょうだい。あなたがちゃんとした人ならね」
(出典 86年2月10日の「Control」に寄せた解説より)
That’s The Way Love Goes
ジャネットのキャリアどころか、90年代のR&Bを語る上で絶対に外すことができない名曲。サンプリングにジェームス・ブラウンとザ・ハニー・ドリッパーズを使い、出来上がった曲をジャネットが歌うという破格のナンバーである。この偉大な二組を臆することなくサンプリング出来るのは彼女ぐらいのものだろう。リリースは1993年だが、10年代真っ盛りの現在でも愛され続けている。90年代に青春を謳歌した方々の中には、この曲を「我が座右の一曲」に選ぶ方も多いかもしれない。
ジャネット史上最高の売り上げ(約2000万枚)を記録したアルバム、「janet.」に収録。
Any Time, Any Place
「That’s The Way Love Goes」に同じく、「janet.」に収録されているナンバーだ。ここで紹介するのはシングル・バージョンだが、アルバム・バージョンの方もぜひチェックしていただきたい。官能的で、いかにもベッドシーン然としているのがシングル仕様だ。線が細く、退廃的なイメージが強いのはこちらかもしれない。それに比べてアルバム仕様は、攻撃的な重低音も相まって、より力強い印象を受ける。どちらも間違いなくジャネットの曲だが、彼女にしか出せない女性的なタフネスを表現しているのは、圧倒的に後者だろう。ケンドリック・ラマーが憧れたのは、彼女のこういう部分だと思う。
Got Til It’s Gone
こちらは97年にリリースされた6枚目のスタジオアルバム、「The Velvet Rope」に収録されている一曲。個人的な好みを言わせてもらえば、これまでにジャネットが発表したアルバムの中で一番好きなのがこの一枚だ。「janet.」でのワールドツアー後、彼女は重度の神経衰弱に陥ってしまう。幼い頃受けた大人からの虐待が、この時期になってフラッシュバックしてしまったのだ。その時の様子を、彼女はこう語っている。
「本当に本当に辛い時期だったわ。夢も希望もなくて、迫ってくる壁から逃げられない心地がしたものよ」
(1997年のMTV NEWSより)
当時はまさに飛ぶ鳥を落とす勢いだったが、同時に尋常じゃないほどのプレッシャーを感じていたのだろう。そのような背景で制作されたこのアルバムは、極めて内省的な内容になった。「Got Til It’s Gone」はその筆頭である。
Rock With U
最後まで迷い続けたのがここでピックアップする曲である。「Rock With U」と「Feedback」のどちらをフォーカスするべきだろうかと、悩みに悩んだ。と言うのも、実はこの「Rock With U」、今回のワールドツアーのセットリストには組み込まれていないのだ。この曲が収録されているのは「Discipline」というアルバムだが、ここからツアーのセットリストに組み込まれているのは、先に述べた「Feedback」だけである。来日公演のことを考えるのならば、どちらをピックアップすべきかは明白かもしれない。が、こればかりはやや個人的な感情が先行してしまう。筆者のような若輩者にとっては、この曲には特別な思い入れがあるのだ。明らかに今までのジャネットとは違い、未来志向でSF的な世界観を孕んでいる今作。まるでジャネットが「あなたたちの事だってちゃんと見てるわよ」と言ってくれている様な気さえするのだ。くだらない妄言かもしれないが、この曲でますます好きになったのも確かである。MVにも若いダンサーが多く出演しており、その事実が更に妄想へ拍車をかける。
「Rhythm Nation」と「All For You」から一曲もピックアップできなかったのが、やはり心残りだ。特に後者は日本のチャートでも大いに注目された一枚である。聴きやすい曲も多く、ジャネット入門盤としては打って付けかもしれない(じゃあここからも選べよ)。新作アルバムのリリースがもう目と鼻の先だが、今一度ここで名曲たちの総復習をしてみては如何だろうか。
ジャネット・ジャクソン来日公演
<大阪>
2015年11月19日(木)
会場:大阪・インテックス大阪 5号館
<埼玉>
2015年11月21日(土)
2015年11月22日(日)
会場:埼玉・さいたまスーパーアリーナ
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