【ソニックマニアライブリポート】FlLYING LOTUS

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Brainfeederの長、Flying Lotusの登場。この日は本邦初公開の3Dライブが行われるとのことで、10000人収容できるステージも熱心なオーディエンスで埋まった。これまでにも彼は「Layer 3」や「Hyper Cube」など、実験的なプロジェクトを成功させてきただけに、この日最大規模の関心を集めていた。開演までの数分間、スクリーンに映し出される“PUT ON YOUR 3D GLASSES”の文字に心を躍らせていた人も多いだろう。

 『Getting There』に始まったライブは、出だしから半ば暴力的に世界観へと誘う。目まぐるしく切り替わる映像に加え、無数に飛び交うレーザー。「没入感」とはこのライブのためにある言葉である。文字通り、“そこにある”。立体的に映し出される映像は、触れることはできないものの、まさしく“そこにある”ものとして提示されていた。大げさな言い方に聞こえそうだけれど、現時点での映像表現の極致を感じた。
 そしてもうひとつ重要なことを。革新的な映像は称賛されてしかるべきだが、やはり彼の真の生業はビートメイクだ。目をつぶって聴いていても、サウンドだけでトリップできる。驚きをもって歓迎された、映画『ツイン・ピークス』と『攻殻機動隊』のエディット音源、『Zodiac Shit』や『Never Catch Me』のようなオリジナルトラック。彼が放つ音すべてが全身を貫いていった。総合芸術的な表現の根源には、規格外のビートメイクがある。その意味では、あるいは「映像は要らぬ」という意見も出てきそうである。ネガティブな言い方に解釈されそうだが、それほど彼の音楽は優れているのだ。4つ打ちでもトラップでもない、これほどアブストラクトなビートでオーディエンスを沸かせることができるのは、今のところFlying Lotusの他には数えるぐらいだろう。
 なお、Brainfeederは今年で20周年を迎える。これまでと同様に、革新とリヴァイヴァルを重ねてシーンに貢献してくれるだろう。今回の3Dライブについて「映像表現の極致」と書いたが、それを更新するのも彼らである予感がする。