今年も炸裂する音楽の魔法。Peter Barakan’s LIVE MAGIC! vol.2

今年もピーター・バラカン氏のオーガナイズにより、昨年に引き続き2回目のLive Magicが開催される。日本の音楽シーンへの貢献度が著しい同氏の主催するフェスとあって、注目度・支持率は大変高い。バラカン氏の圧倒的な人望については、こちらの特設サイトを参照していただければと思う。多くのミュージシャン、あるいは音楽関係者が、一様に最大級の賛辞を送っている。

偉大なミュージシャンたちと自分を並べて語るのはあまりにも恐れ多いが、筆者もバラカンさんには多くのことを教えられた。高校生の頃に「バラカン・モーニング」に出会っていなければ、音楽に対してここまで能動的になることもなかっただろう。何せ実家が田舎なもので、テレビを観る以外に音楽を知る手段がほとんどなかったのだ。そんなとき、私の救世主になったのがラジオである。なぜラジオを聴こうと思ったのかは覚えていないが、いつの間にやら、朝の7時はインターFMにチャンネルを合わせるようになっていた。時間も丁度良かったのだろう。前半の1時間を丸々聴いても学校に遅刻することはなかった。……まぁ、実際のところは学校に遅刻しても聴いていたのだが。

（2014年のLIVE MAGIC!）

（2014年のLIVE MAGIC!）

とは言え、バラカンさんの趣味・嗜好を完全にコピーしたわけではない。これは彼のファンの多くが同じだと思う。何よりも、「音楽の愛し方」を教えてもらったのだ。当時はグレイトフル・デッドすら知らなかった（『ジョジョの奇妙な冒険』がオリジナルだと思っていた程）が、それら素晴らしい音楽に対する接し方を、バラカンさんは大いなる情熱でもって示してくれたのである。Live Magicはその典型であり、集大成だ。筆者は前回も参加したが、新しい発見ばかりで、実に刺激的な体験が出来た。今年も出演するシンガー・ソングライターのReiについては、前回の出演以来ずっと活躍を追っている。彼女はますますギターが上手くなっている上に、可能性しか感じないソングライティング能力も発揮している。

今回が初出場となるアーティストも粒ぞろいだ。例えば、I’m With Her（Sara Watkins – Sarah Jarosz – Aoife O’Donovan）の3人。 普段はそれぞれが別々に活動しているミュージシャンだが、今年の初めぐらいから3人で活動している。まだアルバムは出しておらず、現在出回っているのはシングルだけのようだ。それもジョン・ハイアットのカヴァーだが、内容は大変素晴らしい。

なんでこんなに切ないのだろう。原曲がそもそも悲痛な内容であるが、それとは別のベクトルで切ない。アメリカーナにアイリッシュが溶け合うと、どうしてこうも感傷的になってしまうのだろうか。初めてソーラスを聴いたときの衝撃によく似ている。“I’m With Her”というフレーズも素敵だ。

そして、今回の出演アーティストの中で、個人的に最も楽しみにしているのが彼らである。

アメリカ南部を拠点に活動している、Jonathan Scales Fourchestraだ。“Fourchestra”だけれども3人。彼らの音楽性については、正直なところよく分からない。ジャンルは一体何に入るのですか。「プログレッシブ・ロック」や「モダン・ジャズ」など、カタログで音楽を聴いてきた者にとっては完全に「キャパ超え」である。とにかく巧い。分かりやすく、すごい。一曲聴き終わったとき、あまりのショックに脱力してしまった。かつてアメリカの友人に、「南部は音楽がカッコイイよね」と言ったところ、「保守的でつまらない」と返ってきたのを思い出す。どうやら、あいつは何も分かっていないらしい。

早くも自分の手が汗ばんでいる。いやはや、とにかく楽しみだ。最後に、バラカン氏のLive Magic開催に寄せたコメントを紹介しよう。何だか彼の人柄がにじみ出ているような文章で、思わず顔がほころんでしまった。