ラウドパーク2015 2日目ライブレポート ~Helloween & Megadeth~

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ラウドパークの本気を見た。10周年への意気込みは伊達ではなかった。サバトンが歴史にその名を残し、ディジー・ミズ・リジーが完全復活を果たし、ドラゴン・フォースが長距離ランナー(サークル・モッシュ)を大量生産した。過去最大級の熱量のまま、全くスピードを緩めることなく、各々のステージ最終出演者までたどり着いた。彼らのようなベテランになると、「良くて当たり前」というような重圧も半端ではないだろう。これだけ素晴らしいパフォーマンスが続いた後では尚更だ。しかし、そのような心配は全くの杞憂であった。長年シーンの最先端で輝き続ける彼らは、まさしくメタルの矜持そのものである。

Helloween

helloween

メロスピのパイオニアだとか、メタルの重鎮だとか言われて久しいが、彼らのフレッシュネスは若手アーティストのそれを遥かに凌ぐ。メンバー交代などで色々思うところはあるが、むしろ今のハロウィンこそ、全盛期を更新し続けているようにも見えるのだ。“My God-Given Right”や、“Lost in America”を聴く限り、以前の輝きを失ったとは1ミリたりとも思えないのである。アリーナをシンガロングの渦に巻き込み、オーディンスの心を完璧に掴むライブ巧者ぶり。これぞコール&レスポンスだ。そもそも「以前日本に来たときから、お前らの歌の上手さは知ってたぜ」なんてことを言われたら、全力で応えざるを得ない。

helloween

自分たちの音楽をアップデートし続ける彼らだが、決して過去を忘れたわけではないのだ。最後に披露した曲がその証左だろう。この日彼らがラストに持ってきたのは、カイ・ハンセン時代の名曲“I Want Out”だ。当時へのリスペクトも感じる演出もあり、往年のファンにとっては感涙モノである。隣にいた熟練のメタラーたちは終始鼻を啜っていた。後ろを振り返りつつ、しっかり前を向き続けるハロウィン。良い意味でベテランらしからぬ姿勢こそが、未だに多くのファンに愛される理由なのだろう。来年の6月にも来日する予定らしいので、今から大変楽しみである。

Megadeth

megadeth

少々「メタル」というジャンルは誤解されているように思う。屈強で右翼的な白人が、無茶なことを乱暴に歌うというステレオタイプが未だに存在している。だが、事実は違うのだ。映画などでの描かれ方を見る限り、どうもメタルは「弱者の最後の砦」であるような気がしてならない。メガデスはその筆頭だ。今回のライブではEDMアーティストもびっくりの映像パフォーマンスがあったが、その合間に映画の1シーンがコラージュとして使われた。筆者が確認出来たのは「世界に一つのプレイブック」と「ウェインズ・ワールド2」、「トーク・レディオ」の3本だ。「ウェインズ~」はともかくとして、他2本におけるメガデスは、まさしく弱者の救済者である。日陰者の自分が、唯一強くなれる瞬間。彼らの音楽を聴く時だけ、自分が何者かになれたような錯覚にとらわれるのだ。

megadeth

とは言え、そのようなことについては本人たちは無自覚であろう。演奏中、ほとんど無表情な彼らには「してやってる」的な恩着せがましさは全くない。むしろ、彼らも実は「こちら側の人間」なのかもしれないとさえ思う。センシティブな内容を歌い上げる彼らには敵も多い。メンバー間の諍いもあった。その中にあって、彼らは全く態度を改めようとはしない。これだけ過激でグロテスクな内容の映像を、臆面も無くパフォーマンスとして昇華できるのはこのバンドぐらいのものだろう。ただし、それは弱さと表裏一体の強さなのだ。“Holy Wars”を歌うことによって我々を救済するだけでなく、あるいはメガデス自身も救われているのだとすれば、これほどファン冥利に尽きることはない。膨大な情報量を含むライブが展開される中、そんなことを思った。