夏フェスで町おこし!各地方で開催するフェスティバルが今年も大盛況
今年もさまざまな町や会場で開催された夏の音楽フェスティバル。国内外のバンドが参加し、「夏フェス」の呼び名で人々から人気を集め、この十数年で音楽シーンのなかの重要な音楽文化となった。夏フェスの代名詞とも言えるサマーソニック、フジロックなどは来場者数に年ごとの増減があるものの、毎回10万人以上の来場者数を保持している。2014年よりはじまった「ULTRA JAPAN」の今年の経済効果は95億円(*1)と言われていて、いかに音楽フェスティバルの人気が高まっているかが伺える。
(*1 産経ニュース 2015年7月20日 http://www.sankei.com/gqjapan/news/150720/gqj1507200001-n1.html)
そんなフェスティバル文化のなかで、今回注目したいのは近年各地方で開催されている地域密着型の音楽フェスだ。フジロックなども都市を離れた土地を会場としているが、それとは違い、会場となる街にゆかりのある人物やアーティストが企画して開催され、いわゆる「町おこし」的な役目も担っている音楽フェスティバルを指している。
各地方で夏フェスを開催することで、その街の活性化や町おこしの一環となっている例が多い。毎年、長野県松本市で開催される「りんご音楽祭」は、今年初めて全日程のチケットがソールドアウトとなった。(*2)大手のレコード会社に所属するメジャーなアーティストが出演するのではなく、インディー・レーベルに所属するアーティストたちや、各自の個性的なサウンド・パフォーマンスを追求するバンドたちが100組以上出演するフェスとして人気を博している。
(*2 松本経済新聞2015年09月28日 http://matsumoto.keizai.biz/headline/1973/)
りんご音楽祭実行委員会はHPにて、会場である松本市の活性化や音楽シーンの底上げ、“松本でも音楽に夢を見れる環境を作る。”をテーマに掲げている。(*3)開催7年目にしてチケットが完売し、松本市の持つイメージや認知度が変化しはじめている。
(*3 りんご音楽祭HP ABOUT欄 http://ringofes.info/about/)
福岡県糸島市で開催されている「Sunset Live」もまた「町おこし」の一環として大きな役割を担っている。平成5年から開催されているこのフェスティバルだが、会場となっている芥屋(けや)海水浴場は、平成13年に環境省が定める「日本の水浴場88選」、平成18年には「快水浴場百選」に選ばれた。(*4 *5)
(*4 環境省HP http://www.env.go.jp/press/press.php?serial=2531)
(*5 快水浴場百選HP https://www2.env.go.jp/water-pub/mizu-site/suiyoku2006/)
サンセットライブの実行委員長である林憲治氏は、フェスの会場と同じく糸島にあるビーチカフェ「サンセット」のオーナーであり、このカフェが「Sunset Live」の起源となった。いまでは糸島は九州のなかでの人気観光スポットとなり、さまざまな絶景を映し出す海岸を楽しめるカフェなどが立ち並んでいる。
また、開催9年目にしてますます人気を高めている地方のフェスに「京都大作戦」がある。こちらは京都出身のロックバンド10-FEETが企画し、国内のロック・パンク・メロコアなどのバンドたちが多数出演していて、今年も両日のチケットがソールドアウトとなった。
京都大作戦は名の通り京都で開催しているが、会場となっている宇治市の太陽が丘特設野外ステージは観光客で溢れる京都の中心街からはすこし離れていているため、フェスティバルの人気は周辺地区の経済効果に貢献している。
ほかにも、T.M.Revolutionの西川貴教が地元の滋賀県で企画・開催し、多数のメジャーアーティストたちが出演する「イナズマロックフェス」は来場者数が10万人を超え、収益金の一部を草津市に寄付していたり(*6)、秋に岡山県で開催する「STAR ON」もチケットが早々にソールドアウトとなったりと、街の活性化の一役を買っている。
(*6 びわ湖大津経済新聞 2015年01月27日 http://biwako-otsu.keizai.biz/headline/1136/)
もちろん、開催するにあたっての苦労も多数耳にする。東京とその他の街での音楽に対する捉え方の違いなどはまだ存在し、上記に挙げたフェスの運営もはじめから上手くいっていたわけではない。「町おこし」として機能するためには、その町に根付いたイベントになる必要があるため、それだけの長い時間がかかる。しかし、地方のフェスを立ち上げる主催者たちの強い志があるからこそ、その志に賛同するアーティストたちが集まり、そして観客たちもフェスの魅力を知って会場の土地へと足を運ぶ。
さらに、動画投稿サイトや定額音楽配信サービスなどのリスナーを取り巻く音楽環境の変化や、新幹線の開通などによって各地方へのアクセスが容易になったことから、近年多くの人々が積極的にライブや国内旅行へと足を向けているように見受けられる。今後の地方で開催するフェスの捉え方も変わってくるはずだ。
AndMore!では、今後も各地方で「その街でしか味わえない夏フェス」を追い、みなさまにその魅力をお伝えし、同時にその街が活性化することを期待しています!