【Peter Barakan’s Live Magic! Vol.2】音楽の魔法に酔いしれた2日間

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今年も音楽の魔法を堪能した。ラジオDJのピーター・バラカンが、企画からアーティストのキュレーションまで、ほぼ全ての工程に関わった音楽フェスティバル、「Live Magic! Vol.2」。去年に引き続き、今回も大盛況で幕を閉じた。

Thank you and see you all next year!!
Photo: Moto Uehara

Posted by Peter Barakan's LIVE MAGIC on 2015年10月25日

昨年はジョン・クリアリーとジェリー・ダグラスを観に行ったが、今年は誰か目当てがいたわけではなかった(気になるアーティストは盛り沢山だったが)。当初はリトル・フィートのギタリスト、ポール・バレアとフレッド・タケットがヘッドライナーとして出演するはずだったが、バレアの体調不良によりキャンセルになってしまった。それを受けて、バラカンさんは「ヘッドライナーがいないフェスティバルにしよう」と考え直したそう(ミュージック・マガジン2015年10月号参照)。結果的にそれがポジティブな方面へ作用したように思う。日本での知名度は無いに等しいアーティストたちが、揃いも揃って超絶技巧なテクニックと情熱を見せ付けていた。流石、バラカン・フィルターを通過しただけはある。特に「ジョナサン・スケイルズ・フォーケストラ」の名前は、参加者全員の記憶に刻まれたことだろう。

Jonathan Scales Fourchestra
Photo: Moto Uehara

Posted by Peter Barakan's LIVE MAGIC on 2015年10月24日

オーディエンス側も、そんなバラカンさんの審美眼を完全に信頼していた。Live Magic!のコンセプトを理解し、極めて能動的な態度で会場へ足を運ぶ。音楽を一つの言語として、国籍も世代も越えたコミュニケーションが存在していた。日本人の淑女と、アフリカ系の女の子が、等しくダイメ・アロセナへの愛を語るのだ。デイヴィッド・ラルストンのスライドギターに骨抜きにされる感覚だって、きっと万国共通に違いない。みんな思い思いに音楽への愛情を交換し合っている。この光景を見ていると、音楽フェスティバルの答えが朧気ながら浮かんでくるようだ。ともすれば、世界中の名だたる大型フェスが理想とする形が、Live Magic!では実現出来ているのでは・・・。何とも大仰な言い回しになってしまったが、必ずしも的外れではないはずだ。

Dayme Arocena
Photo: Hiroki Nishioka

Posted by Peter Barakan's LIVE MAGIC on 2015年10月25日

アーティストの熱い部分も垣間見ることが出来た。Reiは2日目のトップバッターにしてアンコールを求められたが、このときの彼女は今にも泣き出しそうだった。敬愛するジョニー・ウィンター(2014年逝去)への想いを吐露し、いよいよ感極まっていた。勢い余って彼を「ジジィ」と形容する場面もあったが、そこには一切の侮蔑的な意味合いはなく、極めて健全な憧憬が込められていた。CDを聴くだけでは分からない、彼女のバックボーンに触れられたような気がする。ジョニー・ウィンターへの憧れを臆面もなく観客の前で言葉に出来るのは、恐らくLive Magicか自身のワンマンぐらいだろう。その意味でも、やはり特異なフェスだと思う。

Guita Rei
Photo: Moto Uehara

Posted by Peter Barakan's LIVE MAGIC on 2015年10月24日

突発的に発生するジャム・セッションも魅力の一つだ。昨日今日会ったばかりのミュージシャン達が、自身の楽器を持ち寄り、即興的に演奏を始める。各々が確かなテクニックを備えているからこそ出来る芸当だが、これがまた凄まじいクオリティなのだ。特に濱口祐自デリヒデイヴィッド・ラルストンの3人によるセッションは圧巻である。「三国同盟(日本・モンゴル・アメリカ)」と銘打たれ、突如ラウンジに姿を見せた彼らは、多くの人の心を揺さぶった。ここで披露された“No Woman, No Cry”は、間違いなく今回のLive Magic!のハイライトのひとつである。不遜な言い方かもしれないが、本家のボブ・マーリーの歌唱よりも心に響いた。

Delehei – Mongol Ethnic Music & David Ralston
Photo: 石田美菜子

Posted by Peter Barakan's LIVE MAGIC on 2015年10月25日

ラジオという媒体から、フェスティバルというイベントに音楽を伝達する手段を移しても、バラカンさんの情熱は変わらない。去年と変わらず、体温の高いMCで会場を盛り上げる姿にはアーティストの演奏と同じくらい心を動かされた。あまりにも会場中を動き回るので、少々心配になってしまったほどである。老婆心ながら、どうかご自愛下さい。

ともあれ、今年も筆者を含む多くのリスナーに、彼の想いは伝わったことだろう。「音楽が好きで良かった」と、改めて自覚した2日間だった。来年も素敵な魔法を期待しています。


Peter Barakan’s LIVE MAGIC! Vol.2
2015年10月24日(土)
2015年10月25日(日)
会場:東京・恵比寿ザ・ガーデンホール / ザ・ガーデンルーム

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Peter Barakan’s LIVE MAGIC! Vol.2