今年のサマソニは原点回帰!クリエイティブマン清水社長インタビュー【前編】

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豪華ラインナップで話題となっている今年のサマーソニック。
そこで主催であるクリエイティブマン清水社長にインタビューを敢行!前編は今年全体を通しての方向性や洋楽中心のラインナップに至った理由に迫ります。

今年は「決断」が早かった

ーーー今年のサマーソニック、AndMore!ではアーティスト発表の度にTwitterでの反応をまとめていましたが、どれもすごく良い反応でした。「寝れないじゃないか」とか「ブッキング担当者と酒が飲みたい」とか…。

清水 飲みますか、当日(笑)。

ーーー社長ご自身は反応をチェックしてましたか?

清水 従来の洋楽ファンが待っていたラインナップなのかなと、リアルタイムでTwitterのタイムラインを見たりしてホッとしてました。今年は最初から洋楽のみの発表で、本当に練ったブッキングだったから。ペースも早くて、1月の段階で洋楽の8割以上はブッキングが完了してましたね。ここ数年細部にまでは自分が思うようなブッキングが出来てなかったこととか、色んな反省点も含めて、僕も凄い集中して取り組んだし、その結果が出たかなと感じてます。

ーーー早く決められたというのは、かなり早くから動いていたんですか?

清水 動きが早かったというよりも、決断が早かったのかな。いつもヘッドライナーの返事を待ったり逆に候補を待たせたりしていたけど、今年はどんどん自分の中で「このアーティストで行こう」という決定が迅速だった。新人も出てほしいと思った人は早くから押さえていったし。その辺りが今年はタイミングとしても上手くいったんだと思います。

ーーーその決断ができたのは、方向性が早く決まっていたからですか?

清水 そこは大きいよね。ヘッドライナーを決めて、そのステージの流れを考えるというのが通常なので、そこが決まらなくてどんどん遅れるっていうのが今までの流れ。ただ今年はヘッドライナーに関係なく、いいアーティストはどんどん早いうちから押さていくことをやっていった。どんなアーティストが来てもしっかりとハマるような全体像が見えていたから、今年はそういう動きが出来たんだと思う。

初期のサマーソニックへ

ーーー第2弾まで海外のアーティストのみで「邦楽を捨てたか」みたいな声もありましたが、そこは意識的にですか?

清水 今年は根本的に初期のやり方に戻して、洋楽を中心にブッキングは進めていたけれど、やはり邦楽も重要だから、自分の中ではいいスロットを考えていたんですよ。でも、メインステージのセカンドでの枠で話を進めていたアーティストがいきなり発表前にダメになった時点で、このやり方はもうマズいなと思って。日本のアーティストは、オファーした後に何ヶ月も返事を待っていても、結局「スケジュールが調整出来ません」とか「出させてもらうけど他のフェスや自分達のツアーもあるんで、アナウンスはこのぐらいで」みたいなやり取りがあるんですよ。

ーーーそれは調整が大変そうですね…。

清水 でも、海外のアーティストの多くは9月、10月でオファーしてもすぐに返事はくれる。そうしたら、どんなにツアーで北米や南米を回っていても、敢えて日本まで来てくれるし、時期的に世界中でも沢山フェスがある中で、サマーソニックを選んでくれたってことなんです。ちゃんと決断してくれるから、こちらはすぐに発表が出来る。
しかも、サマソニのメインステージのセカンド、サードはグラミーを獲るようなアーティストが出たいと言ってくれる枠なんです。今年も興味を持ってくれた海外のアーティストがいくつかいたけど、日本のアーティストの為に「ここはもう決まってるから他のslotは?」って断ったりしてるんですよ。それで3、4ヶ月引っ張って「出れません」ってことになると、断った海外のアーティストにも申し訳ないし無駄にした時間が馬鹿らしくて、自分の中で考え方を変えなきゃいけないなって思ったのが正直な話だね。

ーーー今年のセカンドには海外でヘッドライナークラスのチャンス・ザ・ラッパーがいますからね。

清水 過去にメインステージのセカンドをやってくれた日本のアーティスト、B’zやX JAPAN、Mr.Childrenなんかは凄くサマソニを大事にしてくれていたんです。B’zは1年前から「Linkin Parkの前のセカンドでやりたい」っていう意思表示をしてくれて、「その年はツアーもほとんどないから」ってこちらにアプローチしてくれた。Mr.Childrenもその年はap bank fes(Mr.Childrenの桜井らが主催のフェス)もないし、ツアー終わってサマソニにシフトするくらいの意気込みで来てくれたし、当日のトラブルも含めて盛り上げてくれた。X JAPANに至っては、発表する前にYOSHIKIさんがTwitterでつぶやいちゃうくらい…(笑)。レッチリの時間が遅れないように時間通りにもやってくれたね。

SUMMER SONIC 2009 B'z
SUMMER SONIC 2009 B’z

ーーーそんなこともありましたね(笑)。

清水 みんなそういう気持ちでやってきてくれたんです。ただ、最近はフェスが多過ぎることと、海外のアクトを招聘するサマソニも他と同じように考えられたら、それはちょっと違うんじゃないかな、と思って。そこは僕らの邦楽チームとも話し合ってやり方を戻していかないといけないところですが、海外のアーティストのやると決めたらすぐに契約を交わして、それに集中するっていうのと、日本の色んな状況を見てゆっくりゆっくり決めていくというその温度差を痛烈に感じました。

ーーーサマソニの時期は邦楽系フェスもたくさんありますからね。

清水 多くのフェスに出ることがプロモーションになるのは理解しているから、新人だったり、それを最初から意思表示してくれる人は全然いいんだけど、やはりある程度重要なポストを用意して、尚且つ引っ張るだけ引っ張って、「やっぱりすみません、出れません」みたいなのは、ちょっとマナー違反じゃないかなと。ぶっちゃけ、海外アーティストの決断力に対してフェアじゃないなっていう気がしたんですよ。

ーーーなんでそこを断るんだろう?と正直思いますが…。

清水 初期には洋楽中心でやっていて、「サマーソニックに出て海外のバンドと同じステージに出たい!」っていう憧れの場だった。でも今はステージも沢山できたし敢えて敷居を低くし過ぎた部分はあるかもしれないから、そこをもうちょっと前のサマーソニックに戻した方がいいんじゃないかなって感じるね。今回のワンオクのように以前は小さいステージから4年連続でてくれて、今や世界を股にかけて戻ってきてくれるバンドもいるから。日本のフェスであろうと海外のレベルを体験することは絶対にプラスになるはずです。

プレッシャーになっていたヘッドライナーのブッキング

ーーー“初期のサマソニ”がどういうものだったのか、体感していない世代も増えてますからね。

清水 今年で19年だからね。高校生だったら生まれてないし。最初、2000年のサマーソニックは2ステージしかなくて、洋楽が中心であった中でもDragon Ash、THE MAD CAPSULE MARKETS、TRICERATOPS、くるり、SUPERCARっていう洋楽をしっかり聴いてきた、その時勢いのあるバンドが出ていて、ビックリすると思うのがSUPERCARの前にCOLDPLAYとSIGUR ROSが出てたっていう、そんなフェスなんですよ。

それが進化して、2005年、2006年ぐらいにどんどんステージが増えていって、6ステージぐらいにまで変化したのかな。チケットもすぐソールドアウトになって、ステージもちょうどいい数で、コンパクトに色んなライブが観られるフェス感だったんです。でも、それ以降は「ソールドアウトするから」っていうことでキャパが6万人まで増えて、ステージもどんどん広げていって、その結果「6万人入れるには、もっと凄いアーティストを獲りに行かなきゃいけない」っていう自分の中でもプレッシャーになっていた。
でも、今年はもっとファンが観たいもの、そして自分も素直に「これ観せたいな」っていうものをブッキングして観せていくような、初期のサマーソニックに戻せないかな、ということでキャパも減らして、ブッキングの流れも当時に戻しました。

ーーーなかなか見られないようなビッグアーティストを呼んでたのは海外フェスと肩を並べることを意識しているのかなと感じてました。

清水 そうだね、戦ってましたね…。例えばロラパルーザとぶつかる時があったり、8月の後半だったらレディング&リーズ・フェスティバルとぶつかったりしたんですよ。

ーーー海外でも人気の高いフェスですからね。

清水 そこと戦って、遜色ないブッキングだって言われると自分でも嬉しいし、実際そのぐらいの勢いで戦っていた。ただ、そうすると自ずとギャラも高くなるし、どんどんメインのアーティストにギャラが行って、それ以外のアーティストには払えないことになってしまう。出てほしいアーティストにオファーしても「その金額じゃ行きたいけど行けないな」っていうことになると、非常にバランスが悪くなるんだよね。
フェスとして世界のどのフェスよりも凄いヘッドライナーを出して、お客さんはそれだけで満足するのか?っていうことで。単純にビッグアーティストだけを見るんだったら単独でいい。それを感じたのが、クイーンを呼んだ時かな。

queen
SUMMER SONIC 2014 QUEEN + Adam Lambert

ーーー2014年ですね。

清水 あれは凄い夢だったし、素晴らしいショウで全然後悔はしていないんだけど、ただ思うほどの動員ではなかった。でもその後、クイーンが武道館でやった時は、次から次へとチケット完売で、凄い盛り上がりだったわけですよ。フェスで呼んだことが話題になって、動員にも繋がってくれたと思うんだけど、でもそれは無理矢理フェスでやらなくてもいいんじゃないかなって。それよりもフェスティバル全体のバランス感というのを重視した方がいいんじゃないかなっていうのはここ数年のブッキングで感じたかな。

ーーー今年のサマーソニックは実にバランスの取れたラインナップですもんね。「新人だけでも観たい人がいっぱいいるから行きたい」という声も聞きます。

清水 そこは正しく狙っていたところだし、そう思って来てくれたら本当に嬉しいですね。ここからまた次のヘッドライナー級が生まれるんじゃないかっていうぐらい才能あふれる新人たちを10アーティスト以上揃えたから、それだけでも見る価値はあると思う。それに、お客さんがそういう視点を持ってくれると、僕も苦しみながらではなく、楽しみながらブッキングが出来るっていう(笑)。だから、今年が成功してくれると自信にもなるし、この路線は続けられるんだなって思うので、期待しているところではあるんです。
 
 
以上、清水社長インタビュー前編でした。
中編では今年の出演アーティストや各ステージ割についての話題をお送りします。続きはこちら

今年のサマソニは原点回帰!クリエイティブマン清水社長インタビュー【中編】


SUMMER SONIC 2018
2017年8月18日(土)・19日(日)
東京会場:ZOZOマリンスタジアム&幕張メッセ
大阪会場:舞洲サマーソニック大阪特設会場

<関連リンク>
SUMMER SONIC 2018

photos:furukawa text:くのまい

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