今年のサマソニは原点回帰!クリエイティブマン清水社長インタビュー【中編】


豪華ラインナップで話題となっている今年のサマーソニック。
主催であるクリエイティブマン清水社長へのインタビュー中編ではブッキングの裏側やその意向についてのお話をお届けします。

<インタビュー前編はこちら>

今年のサマソニは原点回帰!クリエイティブマン清水社長インタビュー【前編】

第2の黄金期に向かうヘッドライナーの二人

ーーー今年のブッキングは観せたいものをブッキングしていったということでしたが、楽しみながら進められましたか?

清水 そうですね、自分がこの流れで見たいなというものを実現出来ていると思います。もちろん、断られたアーティストもいましたけどね。例えばシーアやソランジュ、チャイルディッシュ・ガンビーノあたりは今のシーンの流れ的にぜひ呼びたくてオファーしたのだけど、ちょっと金額的に合わなくて… 。あと、チャーチズも本当は入れたかったけど、オーストラリアのフェスとフジロックの流れの方が日程的にも良かったみたいです。そういう事もあったけれど、今年は非常に満足出来るブッキングになったと思います。

ーーー各ステージ割では東京1日目(大阪2日目)のマリン・ステージ、マシュメロからノエルの流れが意外だなと思ったのですが…。

清水 ここはセカンド枠の日本のアーティストがなくなったので、アーティストを移動させたんです。マシュメロは本当はベック、チャンス・ザ・ラッパーの日に出てもらう予定だったんだけど、ノエルの日に移動してもらって。だからこの流れは「えっ」って思うかもしれないけど、そういう事情があったんです。

MARSHMELLO
MARSHMELLO

ーーーなるほど。

清水 ただ、今年は洋楽のラインナップが充実していたからこそ、こうやってアーティストを動かしても各日のバランスを取ることが出来たと思う。マシュメロも夕暮れ時にプレイしてもらう方が気持ちよく出来るしオーディエンスも上がるでしょう。

ーーーヘッドライナーはどういうお考えで決定されたのでしょうか?

清水 ベックは昨年の「カラーズ」は最も聴いたアルバムだったし、武道館公演がとにかく素晴らしかった。マネージャーから出したいというプッシュもあったけれど「これをまたサマソニで見せたい」って思えたし、彼は2001年のマリンスタジアムに移動したサマーソニック以降出ていなかったんだよね。「何でこんなに素晴らしいアーティストに長い間オファーしなかったのか?」という反省もあって。だから、今年はベックで締めるっていうのがすごく合っているなと感じてます。

BECK

ーーーもう1組のヘッドライナーであるノエルとの並びもいいですよね。

清水 昨年、お互いが良いアルバムをリリースして、25年以上のキャリアで未だに挑戦し続けるロック・レジェンドのすごさっていうのが二人に共通しているところだと思う。ノエルもベックも規模感は違えど次の世代のローリング・ストーンズやボブ・ディランのようにずっと続いていくアーティストになって来ているんじゃないかな。それこそ第2の黄金期を迎えようとしている二人がちょうど並んだっていうのはすごく見応えがあると思う。
3月にSXSWに行った後、メキシコのVive Latinoっていうフェスでノエルのライブを観てきたんですよ。そこでのライブは「Holy Mountain」からで、あの曲って凄く始まりがいいじゃない?もうすごい勢いのあるスタートだった。さらにOasisのナンバーが来たらメキシカンが皆大合唱してる。それを見てもう安心だなと思いました。今バンドにはOasisの元メンバーも集まって来てるしね。

NOEL GALLAGHER’S HIGH FLYING BIRDS
NOEL GALLAGHER’S HIGH FLYING BIRDS

相乗効果で良いアーティストが集まる

ーーー第1弾ではチャンス・ザ・ラッパーの決定も話題になりましたね。

CHANCE THE RAPPER
CHANCE THE RAPPER

清水 ここ数年で言うと例えばドレイクとか、ヒップホップのアーティストは単独で呼ぶと武道館をいっぱいにしても全然見合わないようなギャランティーになるから、そこはフェスティバルで呼ぶことが窓口になると思っていて。今年のサマソニのチャンス・ザ・ラッパーとフジロックのケンドリック・ラマーは今観るべきヒップホップ・アーティストの筆頭なので、この2つが来るというのは事件でもあると思う。そこでオーディエンスも盛り上がれば、自ずと呼びやすくなるし、ひょっとしたら僕らが昔やっていた「スプリングルーヴ」のようなフェスがまた生まれるかもしれない。あの頃はカニエ・ウエストやスヌープ、ファレルを日本に呼んでいましたからね。

ーーーその他のラインナップではロック勢の層の厚さもすごいですよね。

清水 正直、最近のサマソニの流れは次の若いオーディエンスを獲得する狙いもあってポップスや邦楽に寄っていたんです。今まで来てくれていたロック好きなサマソニのオーディエンスは年齢と共に来なくなってるんじゃないかって。
でも、多分そうじゃない。洋楽ロック好きは、30代、40代、50代になってもずっとバンドを愛してるし、ロックを聴き続けるだろうし、絶対フェスに来たいはずだと。そう思ったら、その人達に対して、僕は何て失礼なことをしたのかなと気付いた。自分だって50過ぎても世界中のフェスでロック追いかけているしね。
なので、サマーソニックではしっかりとロックを続けていかなきゃいけない。時によってはポップス寄りになるブッキングもあるだろうけど、今後も必ずロックファンを満足させられるステージを用意しておこうと思っています。これは今年の反応を見てひしひしと感じたので実行していきたいですね。そして次世代からはロック、ソウル、ジャズ、ヒップホップ全てを消化したミュージシャンが多数現れている。

ーーーその思いはソニック・ステージに表れてますね。

清水 今年のソニックは自信満々ですね(笑)。前半の今見ておかないと次どんなレベルに上がるか分からないような期待の新人勢から今のインディーロックを牽引しているアーティストへっていう流れ。ここのステージを2日間見るだけでも十分1つのフェスティバルになるんじゃないかなと思います。

ソニックステージ

ーーー去年もでしたが、女性の新人アーティストがすごく充実しているなって思ったんです。

清水 去年はデュア・リパやザラ・ラーソンがいて、今年はビリー・アイリッシュやジョルジャ・スミス、ケレラ、IMDDB(アイアムディーディービー)なんかもいますからね。ビリー・アイリッシュはSXSWで観てきたけど、末恐ろしいですよ。アコースティックとバンドの両セットを見たんだけど、どっちもいける。つまり、ちゃんと歌い上げてしっとりも観せられるし、バンドとしてパワフルなものも出せる。この子は本当に先が楽しみです。これでまだ10代ですからね。

ーーー出演は東京1日目(大阪2日目)のソニック・ステージですね。

清水 さらにはアレッシア・カーラという新人でもグラミー獲ったような人まで含めて、女性パワーっていうのはきてますね。初日マウンテンのドリーム・ワイフ~ペール・ウェーブズ~マーモゼッツの流れと2日目セイント・ビンセント~パラモアの流れは必見。日本のアーティストも含めて言えることだけどかなり多くの女性陣の出演がありますよ。

ーーー海外のフェスだと「ラインナップに女性のアーティストが少ない」みたいなニュースもありましたが。

清水 僕はラインナップを見ていて、女性のアーティストが少ない時って「あれ?足りないな」って感じるんです。そういう時は敢えて探しに行くしバランスをとる。今まででもビヨンセとリアーナがヘッドライナーを務めた時のエネルギーは忘れられないし、ガガやテイラーも出ている。キャンセルになったけどアデルとケイティ・ペリーも名前があがった。次にそのレベルに行く新人が出てきてもらいたいです。

SUMMER SONIC 2009 Beyoncé

ーーーそういった新人アーティストを選ぶ時の基準ってありますか?

清水 基準としては自分のレーダーに引っ掛かるかどうかってことだけかな。新人ってオファーする時に次のライブが決まっていることは皆無だからライブを観て判断とかはできなくて、エージェントからの情報や、自分でもYouTubeを見たりして、いいなと思ったアーティストをいち早く捕まえに行くんです。その中でも特に今年は期待値の高いアーティストが根こそぎ決められました。

ーーー本当にどれも観たいアーティストばかりです。

清水 同日やっている世界のフェス、新人枠どうすんの?って思うくらい(笑)。でも、それができたのはすぐ判断して「サマソニでどうしても初来日してほしい」って熱心にオファーができたり、トップクラスのアーティストのギャラを抑えた分、新人に上乗せ出来たっていうことが上手く繋がっていったと思うので、このパターンにして正解でした。そうやって良いアーティストが揃っているところにまたアーティストは出たがるし、相乗効果になっていったんだろうと思います。

タイムテーブルは転換時間を長めに

ーーー邦楽アーティストは大阪にONE OK ROCKが発表されましたが、まだ大きな追加発表は控えていますか?

清水 もう1アーティスト、邦楽でドームクラスのアーティストを発表したらほぼメイン級のアーティストは出揃う感じかな。海外でも活躍するONE OK ROCKが帰ってきてくれるってことで、大阪のファンは東京との格差が埋まったと思ってくれると嬉しいな。

ONE OK ROCK
ONE OK ROCK

ーーーわざわざ大阪に行く人もいそうですよね。

清水 ただ僕は今年の大阪ってすごく良いと思うんですよ。色んなステージを観たいっていう時に、大阪のコンパクトな会場って動きやすくて、色んなものが観られるんです。東京だと、どうしても屋外と屋内のステージの移動には時間がかかってしまうから。

ーーー観たいものが多いということは、その分タイムテーブルが被る可能性も高いですからね。

清水 そこなんだよ。例えば東京1日目(大阪2日目)のトリのノエルとクイーンズ・オブ・ザ・ストーン・エイジとテーム・インパラとかね。でも今年は全てのステージとはいかないけど、転換時間を出来るだけ長く取ることで、例えば40〜60分ずつとかで2アーティスト観られる、みたいなタイムテーブルを作っていこうと思います。あと、大阪の場合は今まで野外のステージを全て9時で終了しなきゃいけないから、最後がモロ重なっちゃったり、タイムテーブルを作るのがすごく難しかった。なので、そこをキョードー大阪さんと話しながら、野外もせめて9時と9時半みたいに終演時間をちょっとずらせないか、今調整してもらっています。

アジアのオーディエンスに向けて

ーーー今年、アイランド・ステージはビルボード・ジャパン・ステージになるとのことですがこれまでと比べると規模は拡大するということですか?

清水 そうです。ここに出るジェス・グリンなんかはイギリスの大物ですし、普段のビルボード・ライブに出るようなアクトを3組ずつ出します。しっかり独立した1つのステージとして、昔で言うと野外にあったダンス・ステージや今年なくなったガーデン・ステージぐらいの規模のものがマリンの外周に出来ると思ってもらっていいです。

ーーーでは、これまでアイランド・ステージに出ていたアジアのアーティスト達は今年は出演しないんですか?

清水 いや、このビルボード・ジャパン・ステージの前半に出てもらおうと思ってます。アジアのアーティストが出るステージは最初オーディション・ステージみたいな感じでスタートしたけど、今は現地でホールを埋めるくらい人気のあるアーティストが呼べるようになってきたし、今年しっかりとしたステージになったことで、より良いブッキングが出来るはずです。
そこをちゃんと考えなきゃいけないなと思ったのは、ここ数年のアジアのオーディエンスの多さ。今、来場者の1、2割くらいまでになっているんです。台湾、韓国、中国、シンガポール、様々なところから来てくれる人達にとって、自分の国の人気アーティストがサマーソニックに出るのはすごく嬉しいだろうし、そうしたら必ずそのステージを観に来てくれる。だからしっかりとしたブッキングにしなきゃいけないなというのは常々感じていたので、今年そういう流れに持っていこうと思います。

ーーー最近、中国ではインディ・シーンがすごく盛り上がっているようですからね。

清水 そう、The fin.が中国10ヶ所回ってほぼソールドアウトって聞いたし、中国の深圳ってところで現地のレコード屋さんとかが仲間でやっているクラブがあって、そこに細野晴臣さんや戸川純さんをブッキングして1,000人入ったなんてことも聞くし、中国で今どんなサブカルが起こってるんだ?!って思った。
でも、今まで中国って海賊版ばかりで音楽からは利益を得られないと思っていたところが、これからストリーミングとかでちゃんと皆がお金を落として音楽を聴くような文化になっていくわけじゃない?そこに10億人以上がいるっていうのはすごく大きなマーケットだから、そこで今後何かが起こるというのは必然だよね。だから、僕らもサマーソニックを中国でやったり色々トライしているけど、今後も何かしら爪痕は残していこうかなとは思ってます。
 
 
以上、清水社長インタビュー中編でした。
後編ではソニックマニアや今後のサマーソニックについての話題をお送りします。続きもお楽しみに!

今年のサマソニは原点回帰!クリエイティブマン清水社長インタビュー【前編】


SUMMER SONIC 2018
2017年8月18日(土)・19日(日)
東京会場:ZOZOマリンスタジアム&幕張メッセ
大阪会場:舞洲サマーソニック大阪特設会場

<関連リンク>
SUMMER SONIC 2018

photos:furukawa text:くのまい

  • ツイッターで最速最新情報をお届けします